2人で買い物=デート?

「わぁ…。こんな服とか似合うのかなぁ。」

「愛なら似合うよ。ほら試着してこいよ。」

「うん。」

「他にも…見つけとくか…。」


シャッと音を立てて試着室のカーテンが開く。


「…ど、どうかな。」

「似合ってるよ、愛のスタイルの良さがより際立ってめっちゃいい感じだよ。」

「そ、そうかな…。なんかいつも着ないような服だから、似合ってるのか不安になる。」

「いつもみたいな可愛らしい服じゃなくてボーイッシュな感じで、シュッてしてるから、かっこいいね。他にも、ほら、これとかも着てみなよ。」

「……う、うん。」


めっちゃ可愛い。ボーイッシュな服装も似合うなんて、ほんとに非が無いな。運動は出来ないみたいだけどね。


この後、10何着か試着したのちに、ほとんど全部買ってしまった。豪邸に住む人のお財布すごいな。


「この後、スマホ見に行きたいんだけどいい?」

「いいよ!見に行こ!」

「服、持つから。」


そう言って服が入った袋を受け取る。意外に重い…。スマホショップに入った時には、左腕が痛かった。


スマホショップで、高すぎずなおかつ古すぎない機種を選んだ。お金は、学校行っていない間に、年齢を詐称してバイトをしたので、結構ある。結構あると言っても中学生からした金額だ。スマホを買うと、半分が消えた。


「これで連絡先交換できるね。」

「そうだな。」

「やった!えへへ。」


嬉しそうにしてる所を見て、ふと考えた。俺は愛のことが好きなんじゃないか。愛の笑顔を見てキュンとしてる俺がいた。いやいや、好きになっちゃ行けないだろ。だって、俺は元引きこもりだし…それに…。


暗い顔してる俺に愛が、話しかけてくる。


「どうしたの?具合悪い?休憩する?」

「あぁ、大丈夫。ちょっと考え事してただけ。」


そもそも愛が、俺を好きになるわけが無い。好きになってくれるわけがないんだ。


その後は、何故か心から楽しめなくなってしまった。愛は、気づいてないようで、ずっとはしゃいでた。可愛いと思う度に、胸がいたんだ。


俺が、愛のことを可愛いとか、思っちゃ行けないんだ。好きになっちゃ行けないんだ。そう自分に言い聞かせて、自分を傷つけた。


そうして、愛と2人で街を歩き、色んな話をしているうちに日が暮れてきた。


「もう、夕方だね。帰ろっか。」

「そうだな。愛のお母さんも待ってるだろうからな。」

「うん。」


帰り道、だんだん街並みの風景が住宅街への風景に変わっていく。名残惜しそうにゆっくり歩く愛。少し寂しそうな顔で


「また、行こうね?」


そういう愛が、可愛くて仕方がなかった。


「そうだな。」


そう言いながらまた、自分を傷つけていた。


愛を家に送り、俺も帰り道を歩いた。気づいたら右目から涙が零れていた。なんでだろう。分からなかった。自分で傷つけた心の傷が痛かった。


その日の夜に、俺は手首に3本の傷をつけた。

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