菅原 愛花
学校に行くようになったとは言ってもすぐになれる訳ではなかった。彼女と話すために登校していたのだからそうなるだろう。彼女以外の人とは関係を持ってなかった。そりゃいきなり引きこもりが、登校するとなって仲良くしようと言うやつはいない。むしろ冷たく扱われた。辛い時は手首の傷が、増えることもあった。
学校に行って初めて彼女の下の名前を知った。苗字は何回か聞いたことがあったけど、下の名前は知らなかった。
彼女の名前は菅原 《愛花》 だった。知った瞬間固まってしまった。漢字は違うが母と同じ読み名だったから。その日は手首の傷が、4本増えた。何が悲しいのかも分からないのに涙が止まらなかった。
学校に行くようになって1ヶ月経った。リスカがバレた。今まで隠していた訳では無いが、長袖だったため、バレなかった。しかし、衣替えがあって手首が見えるようになってしまった。
リスカのしすぎで皮膚が爛れ、赤黒く変色した手首は遠くから見ても異常だった。すぐにバレた。彼女は人のことをよく見ているが、よく見ていない人でも気づけるほど目立った。そのせいで余計に周りから距離を取られた気がした。
彼女は、それでも俺から離れなかった。
「なんでこんなことしたの?なんか辛いことあった
なら教えて?話は聞くから。」
俺だってなんでなのか分からない。ただ家に帰ったらする。みんながご飯を食べるのと同じ感覚でするだけ。つらいことなんてない。
「今は話せなくてもいいから、いつか教えて欲しいな。」
「…わかった。」
「ありがとっ!」
そう言って彼女は、他の友達のところに行った。彼女は、人付き合いがいい、というか彼女の性格が人を集める。俺とは真反対だ。
彼女は、人の変化に目敏い。しかも話し上手で、聞き上手。おまけに、容姿もいい。頭もいい。唯一できないことは運動ぐらい。そんな人柄で、皆が嫌うはずがない。いつも彼女の周りには、人がいた。
彼女と話したくて学校に来ている俺は少し周りのみんながずるいと思った。俺は人前で誰かと話すのが苦手だ。見られてると言う意識が邪魔をして、上手く話せない。家でとか、周りに誰もいない2人きりだといいのだが、こういう人が多い場所は無理だ。
だから、彼女と、ちゃんと話したくても、話す機会がない。
そんな時、彼女と、放課後2人で帰ることになった。
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