濁った世界に産まれ落ちた俺に生きろと要求する女を好きになった
病んでる高二
手首から流れる赤い液体
「ただいま。」
帰宅を知らせる事は、毎日欠かさずする。反応がない事がだいたいだが。それでもする。
この家には、親父と2人きりだ。母は、親父に愛想つかして出ていった。正しくは親父にではなく親父の子である俺になんだが。
家に帰ると先ず俺がやるのは、自室にいき、机の引き出しの中にあるものを取り出すこと。それを手首に当てて勢いよく真横に引く。手首に1本の薄い切れ目が出来、だんだん赤い液体が染み出てくる。ピリピリする、かと言って痛すぎない、この痛気持ちいい感覚にハマっていた。
初めてリスカをしたのは小3のとき、母がやっている所を見て真似して、それから毎日している。リスカをして血を流している間は辛いことを忘れられる。良くないことだとは思っているが、止める気は無い。唯一の生きがいといってもいい。
そんなリスカという行為に依存している俺は高校2年生。名前は霧原 柚子 (きりはら ゆず)。親父は遥輝。今は失業中の、フリーター。時々日雇いのバイトをしている。出ていった母は、藍香。
出ていった理由は…。あまり覚えてないが、親父からお前の母ちゃんは、クズなんだと言われてきた。お前を捨てたんだ。そりゃクズだろうって。実際、俺に愛想つかしてたんだろうけど、親父にもだと思う。
親父が、母のことを言う時は必ず酔っている時だ。滅多に呑むことはない親父が、仕事帰りだけは呑む。そーいう時に顔を合わせてしまうと必ず、母の悪口を言う。俺の顔に母の面影があるからだろう。
俺は、親父の事は嫌いだ。母も、捨ててったんだ、そりゃ嫌いだ。でも、仕事をしている時の親父は好きだ。一生懸命に働いてる姿は嫌いにはなれなかった。もうその姿を見れないんだけど。
親父は元々鍛治職人だった。鉄を熱して、叩いて、伸ばして、汗をかきながら一生懸命造形していくその姿にかっこいいと思ったことは数しれない。でも、もう見れない。残念だが、今の親父を好きになりたくなんかないからいいのかもしれない。
今は夏休みだ。だから、学校に行かなくていい。俺は元々人付き合いが苦手だ。友達は一人しかいない。友達と言ってもいいのか分からない。そんな関係だ。ただ、俺はそいつの事が好きだ。決して叶わないと分かりながらも好きになってしまった。
中学3年まで、あまり学校に顔を出していなかった。ただ、たまたま顔を出しに行った時に彼女と出会ってしまった。
「また学校に顔だしてね。」
ニッコリ笑ってそういう彼女を、最初は学級委員だからって、いちいち気にしなくていいのに。めんどくさい、そう思っていた。何度か顔を出しに行くたびにそう言われ。とうとう俺は
「いらねぇお世話。学級委員だからって俺に気を遣わなくていいよ。」
そう突き放してしまった。彼女は、それでも
「そっかぁ。でも、私は貴方に学校に来て欲しいから言ってるの。一緒に喋ったり、放課後遊んだりしてみたい。」
って言ってきた。あぁ、彼女は、そういう人なんだ。そう理解したら最初の頃に感じていた。めんどくさいという気持ちは消えた。
次の日から、彼女のために頑張って学校に行くことにした。
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