第5話 《陰謀論》
『私の事はレプティリアンと呼んでもらおう、普段はこんなナリではないのでね』
(会話が通じる……? 魔聖ってにも案外、知性があるのか?)
遠巻きに眺めていたパーシヴァルが呟いた。
「
陰謀論級。時代の影に潜む幻想、フォークロアとも呼ばれる。ソレは不老不死の幻想でありながら現代社会に溶け込み世界を蝕む毒。攻撃性は低いが、その知能は非常に高い。他の魔聖と比べて知略に長けている。
『さあ、勝負しようじゃないかステラ・マギア』
「
『はっ、そうでなくちゃ!』
すると、人混みに紛れるレプティリアン。人混みなんてさっきまでなかったはずだった。
コトハはたじろぐ、好奇の目がこちらに向く。いや――
「こいつらレプティリアンか!?」
『あら、もうバレた』
爬虫類の眼がこちらをギロリと睨む。集団戦、しかし。
(本当に人間が混じってる!?)
怯える人の顔を見つけるコトハ、攻撃を躊躇う。そこに。
『がら空きだねぇ』
レプティリアンの一体が突っ込んでくる。打撃は獅子無双には効かないはずだ。
しかし――
『電撃、ってのはどうかなネメアの獅子』
それはスタンガン、いやテーザーガンか。襲い掛かる電撃の線。まともに喰らう。
「ガッ――」
『効果あり、と』
コトハの意識が刈り取られる。そこに。
「そこまでにしてもらおうか」
『……
「ご存じの様でなにより、
弓矢を構えるパーシヴァルがレプティリアンとコトハの間に立つ。
『ふむ、君についてはデータが少ないな、毒は効くらしいが』
「ヒュドラの毒矢なんて用意出来るかい?」
『ここは人質を使おうか』
怯えた人々を捕まえて盾にするレプティリアン。ニヤリと笑うパーシヴァル。
「射手聡明に死角はない」
レプティリアンの背後から矢が放たれた。人質を取り押さえていたレプティリアンが倒れ込む。次々と三百六十度からの射撃の嵐、見事に人質を避けて通りパーシヴァルの敵だけを貫いて行く。
『星の円卓では、我々、魔聖を星の座に封印する事は叶わない』
「ああ、だから時間稼ぎは済んだ、さあ目を覚ませ
「人質解放ご苦労ー、礼は言わねぇぞ」
「ああ、ご勝手に」
レプティリアンの群れに突撃するコトハ。敵は散り散りに逃げ出した。テーザーガンを構える者もいる。放たれる電撃線。それをコトハ握りつぶした。
『何ッ!?』
「二度も同じ技が通用するかバーカ」
――
地面にクレーターが出来る。レプティリアンの足場が奪われる。コトハは獅子無双で生えた巨大な爪で敵の一体を切り裂いた。
緑色の血飛沫、気にしない、気にならない。コトハはハイになっていた。浴びた電撃のせいだろうか。
レプティリアンへの虐殺が始まる。
腕を千切り、首をもぎって、足を引き抜いた。グロテスクな光景が広がる。
嗤うコトハ。己を見失っている。逃げ惑うレプティリアン。追いかけまわす。地獄の鬼ごっこ。まるで悪役の所業。襲い掛かる相手を間違えた。レプティリアンはそう思った。
「星座になって成仏しろよォ!」
さて、これまでコトハの視点で進んで来た物語は、俯瞰による眺めへと姿を変えた。それは新たな戦いの始まりの証でもあるし、僕こと星を束ねる者アーサーの趣味とも言える。
この虐殺は彼の心に何をもたらすだろう。傷を負うかな? 開き直るかな?
幻想相手になら何をしてもいいと思うかな?
全ては彼しだいだ。
レプティリアンが残り一匹になった。
必死に命乞いをしている。
『待ってくれ、俺はまだ何もしてない! 頼む! 見逃してくれ!』
「お前さぁ……確か、人質を抱えてた奴だよなぁ……」
『そ、それは、命令されて!』
「命令されれば人も殺すのか?」
「う、うわあああああああああ!?」
テーザーガンを抜き放つ最後のレプティリアン。それをまともに喰らうコトハ。獅子無双に電気耐性は無いはずだった。
『なんで平気なんだ……!?』
「気合い」
そんな一言で片づけてしまった。コトハの精神、肉体状況は常軌を逸していた。
「――
三つに引き裂かれたレプティリアンは悲鳴を上げる暇さえなかった。
緑の血飛沫にまみれたコトハは血を拭って、獅子無双を解いた。
パーシヴァルが駆け寄る。
「大丈夫かい?」
「
妙に博識な子供だ、神野コトハ。パーシヴァルは呆れたように帰路に着く彼の後を追うのだった。
どうだったかな
コトハの視点で物語を見ていた君達には混乱を与えてしまったかもしれないが許しておくれ。
これは星座が紡ぐ物語。主役はステラ・マギアに留まらない。そのためには、私が駆り出される事になったという訳なんだ。
誰に語り掛けているのかって?
無論、君達、神々だ。
人間と魔聖に自分達の代理戦争をさせている君達だ。
どちらかが勝つ事で、世界を支配する神が決まる。
それを阻止するのが私の役目であり、ステラ・マギアの仕事である。
さあ神々よ、ご覧あれ、これが星の紡ぐ物語の序章の始まりだ。
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