第97話 青堀神社 14
「菅谷、厚木称矢と会いたいんだが」
「まさか、称矢を疑ってるのか!?あいつに人を操るような能力は絶対に無い!」
「いや、可能性はほぼないと思うから確認だけだ。話を聞けば何か掴めるかもしれないしな」
菅谷は渋い顔をするが俺は話を続ける。
「それに操られてる可能性だって有る。それなら丸山のように戻せるだろ?」
「……今はここに居ない」
「どうしてだ?」
「実は……称矢一人で周囲の領域に出ているんだ。一昨日あいつが急に安全な場所を増やそうって言い始めて。俺は危険だから止めたのに……」
急に言い出した?青堀神社は領域としては広い。建物は限られるが、無理に増やす意味は余り無さそうなんだが。
「それは食料の有りそうな領域か?」
「いや……そう言うわけじゃ無さそうだ」
領域数を増やす事が目的か?戦いに向く能力の厚木を操れば、自分は安全なまま領域を増やせる、か。
確かに厚木と丸山の『ホープ』ならペアで難易度の低い領域は攻略出来るかもしれない。
厚木までこちらへ引き込むと、相手が焦ってどんな手でも使ってきそうだな。
「なら、厚木称矢は後回しにしよう」
「それで……どうするつもりなんだ?」
「そうだな……俺は青堀神社を出ようと思う」
俺の言葉に菅谷は目を見開き驚く。
「は……!?」
「操っている奴を今追い詰めると何しでかすか分からない。その場合避難している連中も危険になるし、それはお前達も同様だ」
「それは……俺達をこのまま見捨てるって事か?」
「いや?そんな相手がこれだけ近くにいると安心出来ないから対応するつもりだ。でも、それは今じゃ無い」
確実にサポート付きを追い詰め、逃さない為の準備がいる。もし俺の作戦が成功すれば、被害もゼロとはいかないまでも少なく出来るだろう。
サポート付きはこの青堀神社の中に確実に居る。それならまとめて逃がさないようにすれば良い。
「菅谷、準備が終わったら俺はここに戻って来る。だからそれまでは下手に動かずいつも通りにしてくれ」
詳細を話せばサポート付きに情報が流れてしまう。だから俺に言えるのはここまでだ。
「それ話して良かったのか……?俺が操られたら筒抜けだぞ?」
「ああそれについてだが、恐らく菅谷は精神系の耐性が有ると思う」
「それはどういう……?」
「菅谷の『ホープ』は姿を隠す訳じゃなく、認識出来なくするものだ。となれば相手の脳に影響を与える能力だよな?それで、そういった能力者は、他者が扱う脳に影響を与える『ホープ』の影響を受けにくいそうだ」
俺は話を続ける。
「ただ、抵抗しても僅かな影響は受けるようだ。ま、情報を流す位なら問題無い。菅谷は下手に抵抗して殺されないようにしておけばいい」
この辺は荻菜さんの情報で信用出来ると思う。ただ肝心な所は隠しているので用心は必要だが。
こうして菅谷と放置された丸山と別れ、俺は支配した商業施設へと戻ることにした。
——そうして、商業施設。
「ん?暁門帰って来たのか。意外と元気そうだな」
入り口付近に居たのは孝だった。
「ああ、戻った。で、元気そうに見えるか?この三日間、徹夜もしたしかなりハードだったんだが」
「荻菜さん、早瀬ちゃんと徹夜……?そうか……」
……孝が遠くを見つめてるのは何故だ?何を勘違いしてるんだコイツは。
——というか今はそれどころじゃ無い。
「孝、急いで今居る連中を集めてくれ」
「あ……ああ、分かった」
——残っていたのは早瀬父、早瀬、荻菜さん、それに孝と三人程。
それ以外のメンバーはなんと爺さんを中心に領域を増やしているらしい。一日一箇所を支配、そしてここ以外の三箇所の商業施設は取り敢えず城悟が支配したそうだ。
城悟、椿の二人はどうやら相当鍛えられているようだ。
「さて……青堀神社についてだが、中にかなり危険な人物が居る事がわかった」
俺は要点だけを話す。
「その人物を安全に追い詰めるには封鎖するしか無いんだが……」
荻菜さんが手を挙げてから話す。
「あれだけ広い領域ならどこからでも出れるわよね?封鎖するのはこれだけの人数じゃ無理じゃないの?」
「普通の手段じゃ無理だろうな。だが、今の世界は普通じゃない」
集まっている面々は首を傾げる。
「……青堀神社の近くに有る中央区の区役所。そこを支配すれば全て解決出来るはずだ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます