第98話 青堀神社 15
俺はこれからの行動を伝え、急ぎ足で領域の外に出て魔物を最低限処理しながら走る。
これから中央区役所を攻略し支配するつもりだ。一応爺さん達が戻れば手伝いに来てくれとは伝えてあるが、最悪ソロでも攻略する。
その為に鞄一杯の魔石と、商業施設から回収した秘密兵器を持ってきた。ぶっつけ本番に近い作戦だが検証自体はしてあるので大丈夫だろう。
「さて……」
そして区役所前。中の難易度はまだ確認していないが、重要な領域である以上、最初のスーパーよりも難易度は上だろう。
拳銃と刀を持ち、渦の中へと入る。
……入り口付近にはやはり魔物の姿は無いな。
建物内の構造には詳しくは無いが、ボスが居るとしたら最上階だろうか。まあ、エスカレーターなら最上階へと上がれるだろうか。
中は21階建てで上がるだけでも骨が折れそうだが……仕方ない。
俺はエスカレーターを目指しゆっくりと進む。そしてその途中で魔物の姿を発見する。
「あれは……青いゴブリンか?」
難易度が上だと身構えていただけに意外だった。何故なら通常の魔物が青いゴブリンだったのなら、最初のスーパーと同難易度の可能性が有るからだ。そうなると、ボスはアカグロか?
俺は青いゴブリンに一気に近づき、刀で斬り伏せる。あの頃でも複数相手にしていたのだから、特に脅威ではなかった。
数匹倒しつつエスカレーターに到着し、そのまま上へと登って行く。六階の踊り場でも相変わらず青いゴブリンだったが、13階ではそれが変化した。
「……紫になってるな」
エスカレーター傍から見えた魔物は紫のゴブリン。その手にはナイフを持っているが、それはあまり見た事がない形状だった。もしかしたら、拾ったものではなく出現から持っているのかもしれない。
強さを見るために近づくと、紫のゴブリンが気付き声をあげながらこちらへ向かってくる。
ナイフの射程に入るとすぐに斬りかかられたが、俺はそれを体を捻って回避し、片手で刀を振り下ろす。
青いのならこれで終わった筈だったのだが……刀は紫ゴブリンの体を両断するには至らず、胴を深く斬りつけるに留まった。
「硬いな……!」
一撃で無理だと判断した俺は、後方へと跳躍し一度距離を取った。紫ゴブリンは怯みもせずナイフを振り回しながら俺に迫る。
俺は拳銃を腰に差し、刀を両手に持ち替えるそして、今度は足をしっかりと踏み込み……体重を乗せた一閃を放つ。
その一撃はナイフの隙間をつき、紫ゴブリンの胴を斜めに両断した。
「流石にこれならいけたか」
倒れていく紫ゴブリンの体。そして、手にはかなりの抵抗を感じた。それだけでも確実に青よりも格上だった。
「二十階で更に強いのが出るのか?……まさかな」
俺は嫌な予感を拭えないまま上を目指した。
そして最上階の展望室。予想通りとなってしまい、ため息を吐く。フロアを物陰から覗くと、そこには紫と赤の混じった獣人が居たのだ。
色を考えれば、恐らくボスでは無いのだろう。色は紫ゴブリンよりも上で、獣人という種族的にもゴブリンよりは強いと思える。
丁度良いしここで試しておくか。
そう思った俺が鞄から取り出したのはドローンだ。俺はこのドローンに特性付与を行い、自動攻撃を行ってもらおうと考えた。
兵器操作で銃を扱っても良いのだが、ドローンがある程度勝手に動いてくれる分俺の負担は大きく減る事になる。
「『
これは初めて領域を支配した際に検証した能力。確かあの時は電柱に石弾を撃たせたと思う。
後は攻撃手段となるが、これについては既に考えてある。
俺は右手にドローン、左手にライフルを持ち、それらを重ねた。
「
俺がそう呟くと、ドローンとライフルが淡く光り……重ねた状態で固定化した。
見た目はドローンの下部にライフルがついただけなのだが、どうやらこれで同一のものとみなされるようだ。ライフルは必要になるが、ドローンに幾つも『特性付与』しているのでは魔石の消費が多すぎるため採用した。
俺の能力が発展して扱えるようになった能力だが、『兵器合成』は今後活躍してくれる筈だ。
さて……ライフルドローン。魔石消費に見合った活躍をしてくれよ?
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