第2話 兵器創造

 俺は自宅へと戻り、玄関のドアに背をつけて座り込んでいた。

 

 俺が手に入れた『希望の力ホープ


 まだ実感は湧かないが、あの瞬間……俺は確かに無から銃を作り出した。死を間近に感じて時間の流れが緩やかになった時、瞬時に武器を作りだせると理解した。


 俺は二枚のメモ用紙を見つめる。これはゴブリンとの戦いが終わった後に地面に落ちていた物だ。

 一枚目にはパソコンで打たれたような文字でこう書かれている。


ーーーーーー


兵器取扱説明書


武器タイプ/エアガン

特性/『威力マイト』『衝撃インパクト

弾/BB弾(最大30発)


補足/特性指示が無かった為『衝撃インパクト』はランダム特性となります。


本日の作成可能数(1/2)


ーーーーーー


「随分親切な能力だな」


 作り出した兵器の能力が書いてあるのは有り難い。これがあれば比較も出来て、能力の検証も行える。作成可能数はそのままの意味で、一日に二個作れるって事だろう。


「それにしても……エアガンかよ」


 あの時俺がイメージしたのは警官が持っているような拳銃だった。それなのに出てきたのはトカレフのエアガン。

 いや、確か昔に同じようなエアガンを持ってたけどさ。


 能力に条件でも有って、強い武器は作り出せないのか?もしそうなら一気に使えない能力に格下げになるが……。


 もう一枚のメモ用紙へと視線を移す。そしてそこに書かれていた最初の文字に目を奪われてしまう。


「能力取扱説明書!?」


 まさかの超親切設計だ。俺は食い入るようにメモ用紙を眺め、文字に目を走らせる。


ーーーーーー


能力取扱説明書


 パンパカパーン!ご主人様、能力の覚醒おめでとうございます!

 わたしはあなたのサポートをする取扱説明書です!これからトリセツちゃんって呼んで下さいね!


ーーーーーー


 ここまで読んで軽く目眩がする。

 

「え、何で取扱説明書が喋ってんの?いや喋っては無いけど、取扱説明書が何で自我持ってんの!?」


 取扱説明書にツッコミを入れつつ、先に読み進める。


ーーーーーー


 ふっふっふ。ご主人様はどうやら驚いているようですね!そうです!わたし、自分で考えて文字書けちゃうんです!


ーーーーーー


「俺の行動を先読みすんじゃねえ!」


ーーーーーー


 あ、ごめんなさい。これ以上話してると文字数足りなくなるので、説明に入らせて頂きます。


ーーーーーー


「急に真面目になるなよ……てか話してるのかよ……」


 数行読んだだけで既に疲れたんだが。


ーーーーーー


 ご主人様の能力、ホープって呼んでいるものはですね、『兵器作成ウェポンクリエイト』という能力です。

 既に経験したので理解していると思いますが、ズバリ!イメージした武器や軍事施設を作れちゃう能力なんです!すごい!拍手!



 ただーし!『兵器作成ウェポンクリエイト』には条件が有って、作れるようになるにはその条件をクリアしないといけません!


 ひとつ!ベースとなる物は今まで触れた事が無いと作れません!ご主人様は本物の拳銃を触った事が無いので、触れたことがあるエアガンになってしまったんですね!


 ふたつ!能力が成長しないと強い物や便利な物作れません!いっぱい作ってレベルアップして下さい!あ、本物の拳銃なんてまだまだ先ですよ!先は長い!


 みっつ!作れる物は戦いに使うような武器、施設に限ります!食べ物や便利な道具は頑張って自力で探して下さいね!



 あ、文字数が!本当はまだまだ伝える事がいっぱいあるんですが、最後に一番大事な事を言っておきます!

 わたしがこうして話せるのは能力が成長した時だけです!ご主人様が寂しくなってもすぐに会えないんです!残念ですか?残念ですよね?

 

 あ、もう文字数が限界です!以上!あ・な・た・のトリセツちゃんでし


ーーーーーー


「おい、最後文字切れてんぞ」


 最後くらいちゃんと締めろよ。他に削るところ有るだろ。


 俺のサポートと名乗るトリセツ。どうやら自己主張が非常に強い、曲者のようだ。何でだよ取扱説明書なのに。

 けれど能力の説明が有ったのは本当に助かった。そこだけは感謝しておこう。ウザイし、ちゃんなんて絶対に付けないけどな。


「というかこれ、明らかに説明しきれて無いだろ。兵器取扱説明書に載ってる作成可能数の説明も無かったし、特性についての説明も無い。おい、トリセツ!ちゃんと仕事しろよ!」


 一人で取扱説明書に怒っていると考えると非常に虚しい。

 怒るだけ無駄だな。休憩して飯にしよう。


 ……なんだか戦いよりも疲れたな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る