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家に帰ると母親はタケルの遺品を整理していた。
手付かずのままとなった弟の部屋には今でも高校の制服が掛かっていた。
住宅展示場のモデルルームに高校生の部屋と題してこの部屋を提供してもいいほどに、綺麗に掃除がなされている。
精神を病んでいても弟への普遍の愛だけは変わらずに持ち続けている彼女に、ヒサシは敬意すら湧いてきていた。
赤の他人と思っているからこそ、人にそこまでつくせる人として尊敬出来てしまうのだ。
「そんなもん引っ張り出して何してんだよ」ヒサシは母親の手元をのぞき込む。
それは中学の卒業アルバムらしかった。
弟が所属していたクラスのページを眺め愛おしそうに弟が写った部分を指でなぞっていた。
弟が写っていたのが左ページだとすると、右のページの一部が真四角で切り抜かれているのが見えた。
まさかその部分にも弟が写っていて母親がそれを切り抜き肩身離さず持っているのではないかと、ヒサシは怖気を感じた。
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