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墓参りも早々に済ませ、ヒサシはリョウに連絡をとった。また今日も車で出掛ける魂胆だった。
「ヒサシさん、どういう事っすか、俺ん所に警察が来たんですけど」リョウは会うなりヒサシに問い詰めた。「一昨日、ヒサシさんと一緒にいたか聞かれました」
「ちゃんと一緒にいたと答えたか?」
「言われた通りに答えましたけど、何やらかしたんですか?!」
「別になんもしちゃいねーよ」
「おとべって、横浜で殺された男、タケル殺したやつですよね。もしかして」
「俺が音部を殺したとでも、言いたいのか?」ヒサシの言葉が鋭さをました。間違えて扱えば鮮血を吹き出してしまうほどに尖っている。
「いや、そうじゃないっすけど」
「俺はやってないよ。第一おめーもよく知ってんだろうが、弟の為の復讐を俺がやるとでも思ってんのか? 家族なんて居ないと思ってる奴が」
「そぅ、っすよね」リョウは不承不承と言った感じで納得した。
「ひとつ聞きたいんだけどよ、石原サチって知ってるか?」
ヒサシの問いに、リョウは固まった。
意外な人物から、意外な人物の名前が飛び出し、リョウは混乱した。
「なんでも弟の同級生らしいけど、どんな関係だったんだ、アイツと」
「石原サチを、知ってん、すか…」
「今日、アイツの墓参りに来てた」
「どうなんすかね、あんまり聞いたことないですね」
「あ? 石原サチって女は居るんだろ?」
「はい……」リョウの言葉は刃先の欠けた包丁のように、歯切れが悪くなった。
ヒサシはリョウのその様子を見て、リョウなりに触れられたくないこともあると感じ、追求の手を緩めた。
所詮、石原サチと弟の関係など興味もない、弟に関心のない兄なのだから、石原サチが許嫁だろうがどうでも良いのだ。
リョウと別れることには、リョウも普段通りに戻っておりヒサシは安心した。
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