4
ヒサシは日の出公園でワタルを待った。いつもこの時間にワタルは公園を通り仕事に向かう。
「よぉワタル」早朝ではあるが、熱帯夜が続く横浜では既に気温は30度を超えている。
ヒサシの服は汗で張り付いていた。
「え、ヒサシさんこんな朝早くからどうしたんすか?」
「リョウにお前の話聞いてよ、慰めてやろうと思ってな」とヒサシはコンビニで買ってきたタバコをワンカートン、ワタルに渡した。この代金も盗撮オヤジからくすねた金で買ったものだ。
「酔っ払いにいきなり殴られたんすよ」とワタルは憤りを感じながら細かく説明をした。
「現場の監督さん、キレるとヤバいんで遅刻だけは出来ないんすよ。だから気が済むまでオヤジを殴ってる暇がなくて」
「物足りねーってか?」ワタルの不完全燃焼がヒサシにも伝わってきた。もしそのオヤジが今ここに現れたらワタルはサンドバッグを殴りつけるように、そいつに襲い掛かるだろう。
「で、この辺で揉めてたのか」
「俺があっちに歩いてくじゃないすか?
そしたらそのオヤジが後ろから突然に」
パリッとしたスーツを着た、眼鏡をかけ髪を七三に分けた若い男の顔が突如としてヒサシの脳裏に蘇る。
「5.60くらいのむさ苦しいオッサンだったんですけど、俺らが汗水垂らして働いてんのに、朝っぱらから酒飲むようなクズなんすよ。どう思いますか、ぶっ殺してやりたくなりますよね」
「あ、あぁ。そうだな」ヒサシはまた若いサラリーマンのもの涼し気な顔を思い浮かべた。幾度となくスマホの画面を眺めこっちの方向へと迷いなく進むその顔が、脳裏から剥がれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます