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バイトが明けるとヒサシは家に帰った。
母親が珍しく機嫌が良さそうだった。
特段読むことのない新聞を広げて物珍しそうに同じ記事を何度も音読していた。
横浜市、おとべなおや、刺殺、刑務所、出所
聞き取れた単語から推測するに、昨夜リョウの車で流れていたニュースの続報だとヒサシはわかった。
殺された男の素性が徐々に明らかになっていた。
母親が気に止めるのも無理はない、その殺された男は、6年前、当時高校一年生が乗ったバイクに追突した運転手、弟を死なせた加害者だったのだ。
「コイツ!死んだんだってよ!!」口角から泡を垂らし、気狂いのような表情で母親は喜んでいた。
何か復讐を果たしたかのような、悦に浸っているようにも見える。
「良かったな」ヒサシは呟いた。
弟を殺した男が死んでも、ヒサシの中で何かが変化するようなことはなかった。
変化が訪れないことを間近でかんじていたからだ。
「俺ちょっと出てくるよ、またオーナーから食いもん貰ったから適当に食っときな」そう言い残し、ヒサシはリョウの後輩のワタルに会いに行った。
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