第8話
あの時に急いで正解だったと思う。
俺がリリスの居場所に辿り着いた時にはもう完全にモンスターに取り込まれそうになっていた。
もう息も絶え絶えで、今にも人としてのリリスが死にそうになっていた時に俺が駆けつけた。あと数秒遅れていたらと考えると、恐ろしくて身震いしてしまう。
結果として、リリスは助かったしスタンピードも収まった。俺の宣言通り誰も死ぬことなく終わった。怪我人は何人かいたので正確には被害ゼロという宣言を完璧に達成したわけではないが。
ただそれも軽度なものでしかも冒険者の怪我だからもはやないようなものだ。
自分で言うのもあれだが、本当にあの時の俺は良くやったと思う。
・~・~・~・
俺が現場について真っ先に目に入ったのは今にも死にそうなリリスで。
気付けば叫んでいた。
「勝手に死ぬなああぁぁぁぁーーーー!!!!!!」
「…………ぇ、?……………ジャッ……ク…‥?…………」
「誰が勝手に死んでいいって言った!!!!お前が死んでいいのは俺が死ぬときだけだ!!」
叫び続けながら、リリスに回復魔法をかけていく。普段は剣を使った物理メインだが、俺だってこれくらいの魔法は使える。
一瞬、モンスターの方も回復させてしまうのではないかと思ったがとりあえずリリスが死ななければそれでいい。
「…………で、でも…………この、かんじ……じゃ…………もうむり…………だって」
「まだ諦めるのは早い!現に少し回復し始めているだろう!?」
「………そう、だけど…………」
このまま回復させ続ければなんとかなると思ったが、モンスターさんがそうはさせないと動き出した。
「うぉっ!?」
「!……体が、勝手に…………」
「リリス!無理に動くな!回復することを最優先に考えろ!!」
もしかしたら、この方法が通用するかもしれない。
剣を構え、攻撃してくるモンスターを観察し、リリスの胴体からもっとも離れている場所に狙いをつける。
「…………ごめん…………止められない…………!」
いや、好都合。
「……ここだ」
──シャキン。
高い音をだしてモンスターの足を切る。リリスを乗っ取ろうとしているのは植物モンスターのようで、綺麗に切ることができた。
「あ……ちょっと、楽になった……」
「よし!これなら……」
──俺が考えたのは、モンスターの体の一部を切り落としていけば段々とモンスターの体力を削れるのではないかというもの。
当然、リリスに影響が行く可能性だってあった。でもそれは、今のリリスの反応で問題ないことがわかった。
流石に、リリスの体付近に攻撃するのは危険すぎてやらないが。
だが、あとはこの工程を繰り返せば……!
「リリス!今なら抜け出せないか!?」
「……行ける」
そういった直後、リリスの体から光が放たれた。
「!眩し……」
反射的に目を庇い、また目を開けた時には……。
「お待たせ!ジャック!」
「リリス……!」
無事にモンスターから脱出したリリスがいた。
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