第7話




「……ようやく本気になったか」


「ペンドさん、本当に良かったんスか?いくらSランクとはいえ一人で行かせて」


「大丈夫だ。あいつが皆を守るって言ったんだ。あいつは、ジャックは、一度でも本気で決めたことに関しては必ずやり通す」


「まあ、確かにそうっスけど……今回はリリスちゃんもいるんスよ?万が一にも油断したら、」


「あーもう!いいから俺達は俺達のやるべきことをやるんだよ。まだ敵は残ってるだろうが!」


「ウィッス!スミマセン!すぐ取り掛かります!!」


「ったく……」





「ジャック、頼むぜ……?ちゃんと二人・・で、帰ってこいよ」



・~・~・~・



「カッコつけて勢いで森の深部に突撃してしまったわけだが……どうするか」


 てっきりモンスターに囲まれるかと思っていたのにそんな気配はないし、それどころか動物の類いとさえ遭遇しない。恐らく森の外に出払っているのだろう。


「まあでも、それなら選択に迷うことはないか」


 俺がすべきは第一にリリスの救出。その次に元凶モンスターの排除。最後に元の場所へ戻って残りの敵の殲滅。

 よし、これで行こう。


「まずは、リリスか。だったらこの辺りで気配を探れば分かりそうだな」


 目を閉じ、ゆっくり息を吐いて気持ちを落ち着かせる。

 足を肩幅に開いて力を抜き精神統一。

 

 自分がまるで自然と一体になったように……そして異物を感じとる。



 ……………………!



「見つけた」


 場所はここから少し離れている程度でさほど遠くはない。


 ただ、気配から察するにかなりまずい状況のようだ。ならばすぐ行動するに限る。


「相手に気付かれないように静かに。でも素早く」


「──よし。準備はいいな、俺」





「久しぶりの限界点ゾーン突入だ」



・~・~・~・



「はぁ……はぁ……」


「がはっ!……ぐぅ……はぁ……」


 ある場所で、一人の少女の苦しむ声が聞こえる。

 しかしその体は人のものではなくなり、何かの魔物に変化しかけている。


「失敗、しちゃったなぁ…………本当は……もう、ちょっと……うまくやる、はずだったん……だけど」


「でも、ここまで、来ちゃったら……もう……諦めるしか、ない……かな……」



「ごめんね……ジャック………………挨拶も、出来なくて……」



「こんな……私を好きになってくれて…………ぁぐ!……はぁ……はぁ…………あり、がとう」




「……………………誰からも、返事が…………無いの…………かな、しぃ……なぁ…………」




「ぁ…………もう、ダメ……だ…………目が…………あか、ない…………」






「…………さよ…………な…………ら…………」














「勝手に死ぬなああぁぁぁぁーーーー!!!!!!」

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