第4話
無月の家に付き、インターホンを鳴らす。
時刻は午後の七時半。もう真っ暗だ。
「はーい…って、無月!どこ行ってたの!?」
「おかーさ…」
「全く、心配したんだから…って、この子は?お友達かしら?」
「うん」
「私は霊好。無月が私が住んでる神社にいたから。ここまで送ってきたんだ。…それで…」
「そうなの?ありがとうね。あ、そうそう、神社って?」
「お稲荷神社。立ち入り禁止の向こうに住居があるんだ。私はそこに住んでるよ」
「まぁ、巫女さん?どうりで神社がきれいなわけだわ。あなたが頑張っていたのね」
「巫女…まぁ、そんな感じだね」
「でも、今から帰るのは危ないわよ?泊まっていきなさい」
「えっと…なんというか、いいのかい?」
「別にいいのよ。今日だけとは言わず、しつまでも泊まってもいいわよ?神社だと、危なくて心配だわ。私と無月は二人暮らしなのよ。霊好ちゃんもいたら私も無月も嬉しいわ」
願ったりかなったりだけど、まさか向こうから泊まってと言われるなんて思いもしなかった。
都合はいいけど…。
「…お邪魔します」
家はいたって普通の一軒家。三階建てで結構広い。
明るく、温かい雰囲気だ。
だけど、どこか気持ち悪い。何かがいるね。
「…少し、変なことを聞くけど、最近、何か変な事が起きたりしていないかい?」
「変な事?」
「うん。何かの気配がするとか。物音がするとか」
「…物音はあるわね。たまに屋根裏から結構大きな音がするのよね」
「屋根裏か…」
「私も、気配とかはわからないけど…大きな音はする…」
屋根裏に何かがいるというのは結構多い。
人目につかず、暗くて居心地がいいのだろう。
「もしかして、何かわかるの?」
「えっと、私はこれでも霊媒師をやっているんだ。神社に住んでるから、これくらいはできないとね」
「へぇ!すごいわね。さすが巫女さんね。それで、この家には悪いのがいるの?」
「力はあまり強くないし、今の話を聞く限り物音を出すくらいしかできないと思うけど…」
「違う…」
「無月?」
「屋根裏だけじゃなくて…廊下にも…音がすることがあるの」
「…実害は?物が壊れたとか」
「特には…あ、三階の廊下に引っかき傷のようなものが出来てたり壁が傷ついていたりことがあるわね」
寂しがり…と言う事はないだろう。
どちらかというと、暴れている、といった形に近い。
ただ、屋根裏にいる気配が物を壊したりしているやつとは限らないから無闇に祓うわけもいかない。
…だけど、この気持ち悪さが少し気がかりだな。
「…まぁ、現行犯で祓った方がいいね」
「その時はお願いね」
「止まらせてくれるお礼だよ。…そうだ、私はどこのお部屋にいればいい?」
「私の部屋…いい?」
「いいわよ」
「わかった」
「こっち」
無月の部屋なら都合もいい。人の姿じゃなくて神様の状態にもなれるし。
人の姿のままでもいいんだけど、やっぱりありのままのほうが楽だ。
何より万が一の時に無月を守る事が楽になる。
無月の部屋は三階。それも端っこ。
部屋自体は広く、女の子らしい部屋だ。
…気配が強いね。丁度この部屋の上あたりにいるみたい。
でもさっそく襲ってきたりはしないか。
「今、おかーさんがご飯作ってるから、少し待っててね」
「うん」
「そういえば、霊好ちゃんって、神社ではずっと一人だったの?」
「いや、ずっとではなかったよ。神使…まぁ、小間使いのような子が一人いたね。…今は旅行中で、どこにいるかわからないけど…」
「へー…」
他にも私の神社には時たま知り合いの妖怪が来る。
動物も多いけど、動物の場合は木の実などを持ってきてくれる。
妖怪たちは逆に私の神社から勝手に食べ物を持ってく。
「…トランプ、する?」
「いいよ。私は運が結構良いんだよ?」
「私も…最近運がなかったから、今の運には自信がある」
結果は私の圧勝だった。
神様は伊達じゃない。
…運に神様であることが影響するのかどうかは知らないけど。
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