眠れない夜



 頭を掻きむしりながら、君は叫んだ

 生きる価値なんてないんだと


 ああ、そうかい


 君は叫び、嘆き、苦しみ

 ただ、「死ねたら」と、ぼそっと口にのせる


 ああ、そうかい


 言葉は残酷なんだよ

 気分次第で喚かないでくれ

 わたしを壊すのに、あと一歩だ


 眠れない、眠れない、眠れない

 眠れない、眠れない、眠れない


 空がしらじらと明るくなるまで


 そう言いながら

 ベッドで息をきらす


 ——覚めない夜なんかないって

 ——そんな空虚な言葉はいらない

 ——また、来るんだよ、闇が、また来る


 だから、わたしはここにいる

 いつもかたわらで、そんなおまえを愛し守っている


 ダンダンダン

 その音はなに


 壁の向こうの銃声


 ——守れるのかい

 ——本当に守れるのかい


 おまえの問いに


 わたしは、決意をもって手をさしのべる


 闇がゆっくりと姿をあらわす


 その姿は奇妙に平衡がずれている

 だから、恐ろしい




 ダンダンダン


 ほら、勝ったろう


 ——ああ、強いな、おまえは


 汗みどろで、おまえは息を切らしながら

 息たえだえの言葉を唇に


 今日も、夜が明け

 そして、また夜が来る

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