とある少女とその祖母の話から始まる、世代を超えて受け継がれてゆく〝虫の知らせ〟のお話。
ホラーです。もうホラー以外の何物でもないゴリゴリのホラー。
分量は約3,500文字と短くコンパクトながらも、ぎゅっと詰まったおっかないあれやこれやが胸の内側に刺さってその場に残り続ける、不吉で不穏なお話でした。
道具立てというか情景というか、淡々と描かれるものの大半が怖い。
もう冒頭一行から不穏極まりない上に、読んでいて脳裏に想起される情景まで、どこか不安に彩られている感覚が最高でした。
不吉な出来事を予知する祖母を、小さな子供の視点から見つめる文章。この絶妙な心許なさというか、できることもわかることも限られている感じ。
最後の展開、というか終わり方が好きです。
一瞬びっくりするものの(急に文体というか様式が変わるので)、でも「つまりそれはそういうことよね?」と理解した瞬間の、あの「うっへぇ……」ってなる感じ。
えげつなさというかやるせなさというか、この黒くてドロドロした後味に、まさにホラーの醍醐味を感じた作品でした。