6 苺みるく男子、とは?
「ユイ、今日は楽しかったよ!ありがとね!」
「え、締めないでくれる?未だにミオがここにいる理由が分かってない」
にこにこスマイルを浮かべて手を振るミオに真顔で返す。
現在地、公園から歩いてすぐの自動販売機の前。ミオと初めて会った場所。
ミオが、フリフリしていた手を止めて、きょとんとした表情を浮かべる。
「え?説明読んでない?」
「読んでないよ」
「新しいオモチャの説明書読まないタイプ?」
「そうだね」
「漫画読むとき、登場人物の設定すっ飛ばして本編に突入するタイプ?」
「うん」
「はぁ……」
こくこくと頷く私を見て、ミオは大きくため息を吐くと、自動販売機の右端を指さした。
「読んで」
有無を言わせない声に、慌てて手のひらサイズの四角に書かれた文字を読む。
「えっと…『悩めるアナタに、○○男子!ジュースを買って、恋する背中を押してもらおう!さあ、あなたは誰を選ぶ??』」
とてつもなく頭の悪そうな丸文字が踊るように並んでいる。○○男子ってなんだよ……
そんな私の心の内を見透かしたかのように、ミオは腰に手を当てて、頬を膨らませた。
「あのねぇ!この自動販売機は、恋する女の子専用なの!それぞれのジュースに担当の男の子がついてて、それを選べるの!」
「……はあ」
「ボクは、苺みるく担当!ほら!」
私の手から、ペットボトルを奪い取り、ラベルをぐいっと近づけてくる。
苺みるく担当:ミオ
性格:あざとい・人懐っこい
備考:みるく、はひらがな表記です!
「ひらがな表記……」
聞き覚えのありすぎる単語に、唖然としていると、ミオは、じとっとした目でこちらを見てきた。
「ボクを選んでくれたんじゃなかったってわけね……」
「ええ?」
「ボクがいいって思ってくれたんじゃなかったんでしょ。どうせテキトーに選んだんでしょ」
「えっと」
むすーっとしたミオの取扱い方が分からない。戸惑っている私に、ミオは早口で捲し立てた。
「あざとい系ってさ、意外と需要ないの!信じられる?みんなカッコいい、爽やかイケメンばっか買ってくの!だから、ボクのこと選んでくれた人がいるって喜んでたのに……」
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