6話 監視
人の幸せを見ると何故か壊したくなる。
そんなどす黒い感情が湧き出したのはいつからだろうか…
遠巻きにそんな彼らを影で眺めながら暗殺魔法士ザガロ・ディアルグレイにはそんな感情が小さく生まれていた。
「レヴィもだいぶ丸くなったよね…」
ザガロはそんな彼を見て思わずそうつぶやいた
その口元はすこし怒りを噛み締めているようであった。
「どうしたの?ザガロ」
そんなザガロの表情の変化を感じたのは同じく暗殺魔法士のティディエ・グラディエだった。
そんな彼女にその表情を隠すように口元に笑みを取り繕った。
「別に…」
そう言うとザガロはその場からすっと立ち上がるとそのまま幸せそうな彼らから背を向けた
「しかし、驚きよねぇ。あのレヴィがサランド公爵家…あの男の息子だったなんて…信じられない」
ティディエは吐き捨てるようにそう言うと憎々しく彼らを睨んだ。
「つまり、レヴィはあたしたちの敵ってことよね。まあ憎しみ以外なにもかんじないし、歯向かうならそれに対応するけどさ――」
「レヴィが敵になるのか…」
そう呟くとザガロは左手をすっと目の前の鳩の群れに翳した
次の瞬間鳩の群れは蜘蛛の子を散らすように鳩は空へと舞い上がる。たった残された1匹を除いては。
「仕方ないよね。こうなるのは運命みたいなものだから」
ザガロはそう言いながらぐったりとその場に蹲る鳩を優しく抱き寄せると、左手で
鳩は苦しげな鳴き声をあげたあと、ピクッと再び動き出す。
そして新たな死霊としての命を与えられた鳩は飼いならされたようにザガロの肩に乗った。
「イスラーグに伝えて」
ザガロは文字通りの無理やり作った伝書鳩に伝言を吹き込んだ。
「サランド公ケンヴィード・ゼファー・ティアマートの息子であるレヴィは引き続き監視を続行する。そして彼のそばにいる魔血の――浅葱色のショートヘアに金色と紫のオッドアイの女が彼の背後にいる。その女はどうやら革命派との関係も持っているようでもある。この女はもしかしたらこちらに利用できる可能性もあるようだから判断はそちらに任せる――」
そう言ったその瞬間、ザガロは鳩を虚空に解き放った。
羽音を残して飛び立つ鳩を眺めながら、ザガロその口元に笑みを浮かべた
彼の目には見えていた。これから起きる破滅的な未来が。
あの二人の間の不穏な影。自分がそれになることがわかっていた。
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