4話 茨のアキラ
「やっぱりイスラーグの言う通りだわ」
アキラはそう言うと長い足を扉の枠に掛け見てわかるようにその場を塞いだ
「あんたたち3人じゃ心もとないから援護しろって言われてたけど――もっと面白いことが起きてるじゃないの」
最悪だ――レヴィはただその相手を睨み返す事しか出来なかった。
仮にも大陸最強である魔法騎士団の大尉を相手にするのは分が悪い。
勝てるかどうかではなく、今は最善かの手を出すのが先決だ
「ソフィア、いいか、よく聞け」
レヴィはそういうと隣にいるソフィアに語りかけた
「俺が囮になるからお前は今すぐ逃げろ」
「え·····でも、レヴィは――」
その返答をピシャリと止めるようにレヴィは一言言い放った
「親父を助けたかったら逃げるんだ!」
その一言を聞いてソフィアは反論するのを辞めそのまま裏口の方へと走ろうとした
だがそれを阻むように彼女の足に茨が一気に巻き付く
それは楽々とソフィアの体を拘束し持ち上げていった。
「逃がさないわよ·····誰一人として」
そう言うとアキラはニヤニヤと邪悪な笑みを浮かべその右手をソフィアにかざした。
縛り上げられる茨。それにソフィアは苦しげな表情をうかべた。
レヴィは黒い短剣を構えるとそのままアキラめがけて突進しそのまま振りかぶった
だがその渾身の一閃もアキラは見きったように回避すると今度は左手をレヴィにかざし詠唱した。
「
その瞬間レヴィの目の前に2本の紫色の茨がたちはだかった。
レヴィは瞬間的に黒い炎を放った。
それは1本の茨の幹は焼き払えたが、もう一本の茨は処理し損ねた。
次の瞬間、紫の茨はレヴィの右肩に突き刺さった。
なんとか急所ははずれた――しかし。
「ぐっ·····」
肩に刺さった茨からドクドクと何かが体内に注がれていく
レヴィは黒い短剣で刺さった茨を切り裂きながらふらつく身体を抑えた
「毒·····か」
レヴィは肩で息をしながら目の前で勝ち誇ったような笑みを浮かべるアキラを睨んだ。
「無駄よ。あんた達もサランド公もみんな死ぬんだから」
「お父様·····」
その一言に茨に拘束されていたソフィアが強く反応した。
「そんなの嘘よ!帝国最強の剣士であるお父様がそう簡単に倒されるわけないじゃない!」
ソフィアのその一言にアキラは呆れたように笑いこけた。
「バカね。烈火の剣聖と言われようがそれは過去の威光よ!限最強の絶対零度の男が月に決まってるじゃない」
アキラの高笑いを混ざったその言葉にソフィアは思わず絶望した。
先程までの父は負けないという自信が強く揺さぶられていた
だが、そんな彼女を鼓舞したのは一人の異国の肌をした暗殺魔法士だった。
「お前ら卑怯すぎないか·····」
レヴィは一言そう言い放つ。
毒を受けながらもレヴィのその目には闘志は消えることは無かった。
「誘拐まがいのこと俺たちにさせといて、真の目的はこいつの親父の排除?だったらソフィアを巻き込む必要なんか無かっただろ!」
次の瞬間、レヴィの足元から怒りにも似た黒い炎が立ち上る。
レヴィは黒い刃を握り構えそして、そのままあきらに向けて駆け出した
「バカね。毒を受けた上に死に急ぐなんて」
アキラは一言そういうとその両手をレヴィにむかってかざした
「
次の瞬間、アキラ背後から無数の茨が急激に生えた。
そしてその茨1本1本がレヴィに向かって襲いかかかった。
レヴィは先程と同じように黒い炎を出して応戦する。
だが、その瞬間アキラは勝利を確信したように笑った。
その程度の炎で処理できる茨は二三本程度。その時点で彼は負けている――と。
だが黒い炎の陽炎のあとアキラの瞳に見えたのはそのまま黒い刃を振りかざすレヴィだった。
「うそ·····」
アキラは次の瞬間その横腹を黒い刃に掠め取られた
アキラは緊急避難するように一歩下がった。
その受けた傷に手を当てるとその傷跡は刃物の傷というより魔法傷に近い。まるで高温の刃で削られたような傷だった。
「まさかあんたその刃に
その場に舞い降りたレヴィの黒い刃には揺らめく漆黒の炎が纏われている
だがそれは魔法鉱石で出来た魔剣を使って初めてできる芸当であり、魔法もへったくれもない普通の武器には到底無理な芸当のはず。
だが、レヴィは普通の武器であるその黒い短剣に自分の属性を
「あんた、あたしたちを裏切って後で後悔するよ!」
アキラはその顔に怒りを露わにしてレヴィを睨みつけた。
レヴィも先程受けた毒が進行したように時々苦悶の表情をうかべるが、それさえも忘れるかのように彼もまたその戦いを辞めなかった。
「後悔しない方を俺は選んだだけだ」
そう言った次の瞬間、レヴィは床を蹴ると漆黒の炎を纏った黒い刃を翻しアキラにむかって襲いかかった。
この一撃で全てを終わらせる。
地面が急にめくれた。
思わぬ魔法にレヴィはハッと我に返る。
次の瞬間彼の身体は巨大な岩の腕につかみ取られていた。
「
アキラが使ったのは召喚術だった。
その瞬間、地面から岩山のような巨人が現れその大きな手にレヴィの身体は完璧に掴まれていた。
「俺を本気にさせた貴様が悪い。レヴィ」
「さあ、命乞いをしてみろ!今更俺は貴様を許さないがな!」
完璧に男になったアキラはそのまま右手に力を入れた。
それにリンクするように
徐々にひねり潰される身体。レヴィはそのまま赤い血を吐き出した。
負けるのか·····俺――絶望が全身を支配されそうになったその時だった
ソフィアだった。
いつの間のかあの茨の拘束を脱したソフィアはその瞬間、
そして手に持った針のように細い魔剣を翻した次の瞬間だった。
一本の細い茨が彼女の身体を貫いた
アキラは勝ち誇ったかのように笑った
「無力·····俺の前ではすべて無力だ!」
そのまま崩れ落ちるソフィアの細い身体
その様子をレヴィはただ呆然と見つめるしか無かった。
だが、それと同時にレヴィは不思議な感覚に襲われる。
やられてしまった彼女を見た瞬間、ぞわぞわと全身に流れる血が沸騰するような今まで感じたことがない血のざわめきを感じたのだ。
「ゆる·····さない·····」
その流れ落ちたレヴィの血はやがて渦を巻き黒い魔法陣となる。
なんと言えない怒りの暴走がやがて制御しきれない大きな力になる。
朦朧とする頭の中レヴィはまだ見ぬ者を呼ぶため詠唱する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます