3話 共闘

 レヴィは図らずも敵対していた同僚ザガロとティディエを前にしても冷静さを失ってはいなかった。

 彼らをじっと見据えながら一緒に戦うというソフィアに小さく耳打ちした

「いいか、ソフィア。赤い髪の男は即死魔法を使うが左手でしか魔法はつかえない。だから、左手さえ封じてしまえばほぼ無力化できる」

 その一言にソフィアは彼をちらっと見た

「左を狙えばいいの?」

 その一言にレヴィは小さく頷いた。

「残りの女はお前を狙ってくると思う。だけどコイツは俺に任せとけ」

 その言葉にソフィアは「わかった」と言わんばかりに笑った

 だが次の瞬間、彼女はその手の中に炎の魔力をこめ始めた

「なんか本気でやるみたいだね·····」

 ザガロは一言そう言うと左手の指を立ててその場に『死の魔法陣』を出そうとした次の瞬間だった。

「させない!『連撃業火ガトリングコメット!』

 ソフィアはザガロ目掛けて無数の火球を降り注がせる

 その勢いにザガロは上手く魔法を完成させる事ができないでいた

「ちょっと·····僕ばっかり狙うこと·····」

 降り注ぐ火球から逃げながらザガロは苦しげにそう言う

 ソフィアは彼の左手を目掛けて絶え間なく火球を振り落としていく

 それを避けることしかザガロはできなかった。

 だが、その様子を好機チャンスと捉えていた人物がいた。

 ティディエだった。

「あんたの相手はあたしよ·····!」

 そう言うとティディエは水の魔剣を翻し、ソフィアにめがけて狂おしい水の刃を打ち付けた。

 だがそれは全てレヴィの思う通りの展開でしか無かった。

 瞬時に彼女の間合いに潜り込んだレヴィは次の瞬間彼女を殴り飛ばしていた。

 ティディエの体は思いっきり壁に吹き飛んだ。

 そのままぐったり気を失った彼女を確認したあとレヴィはその床に罠の魔法陣トラップサークルを張った。

 そしてザガロに絶え間なく魔法を浴びせるソフィアに合図した

 奴を誘導しろ――と

「これで最後よ!」

 ソフィアはそういうとその両手に業火を貯め放った

豪火球ヘルファイアボール!」

 ソフィアの放った特大の火球はザガロのすぐ足元に着弾する

 ザガロはそれを避けるように後ろに後退しながら跳躍する

「危な·····」

 ザガロはそう言いつつ彼女から距離をとる

「いい加減やめて欲しいよねこういう狙い撃ち――!」

 次の瞬間、ザガロは足元に強い魔力を感じ取った

 ヤバい――!そう思った時には罠の魔法陣トラップサークルが発動していた。

 一気に絡みつく闇の鎖。それは一気にザガロの体を拘束していった。

「はは·····」

 黒い鎖に拘束されたザガロはただただ笑うしかできなかった。

「流石と言うべきか·····こうも君にやられてしまうとはね」

 レヴィはそんなザガロをみてとても複雑な表情を浮かべていた

「すまない、ザガロ」

「何を謝ってるの?」

 ザガロは困ったように笑った

「君は最初からこうする気だったんだろ?この計画をぶち壊す。そのために僕たちに従っていた」

 そう言うとザガロは観念したように笑った。

「でも、もう事は動いてると思うよ。君一人裏切ったところで何も変わらない」

 その一言にレヴィは何も言わずにソフィアの手を取った。

 そして、この洋館を脱出しようと出口へと走り出した――その時だった。

 洋館の出口に別の人影が立ち塞がっていた。

 その姿にレヴィは驚愕した。

「あら、どこへ行くの?お二人さん」

 その男の口紅をつけた口元がニヤッと笑う。

 その場に立ち塞がった人物は真っ青な軍服に背中にはキマイラの紋章、魔法騎士団の隊服に身を包んでいた

「アキラ·····」

 レヴィはその男を恨めしそうに睨んだ。

 その男――魔法騎士団分隊長アキラ・ブリトニー・ティリスリーは彼らの前に最強の敵として立ち塞がっていた。

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