黒炎のレヴィ～武器として生きる少年は愛を知る

４話 事件が起きる

　綺羅びやかな夜会から修羅の現場へ――

　そのきっかけは闇の潜む1人の刺客が引き起こした。

　風の有力貴族レイヴロン子爵バーナード･キングラムは『火風同盟』の有力者達が集まる大夜会の実質的主催者だった

　この夜会はそれは重要すぎる意味を持っている。

　もしかしたら魔法帝国の歴史すら変わるかもしれい影響力があったはずだ。

　この大夜会を成功に導きサランド公爵家とセルフィア伯爵家の婚儀を滞りなく進ませれば間違いなく自分は出世できる――それを踏んだ上でレイヴロン子爵はこの夜会の主催者に手を挙げた

　この夜会の成功を人生をかけて勝ち取らなければならなかった

　だから、蟻すら入り込む隙も作っては居られなかった

　この大夜会を潰したい人間がいるのは重々承知だ。火の血と風の血の鉄の絆を壊せば嗤う魔血も沢山いるのだ。

　警備を怠ったはずがない。自分の人生がかかった一大イベント何だから…

　でも目の前にいる警備兵はレイヴロン子爵に耳打ちした。

　――この迎賓館に賊が侵入した……と

「ふざけるな！こんな大事な時に！」

　警備兵に誘われ暗闇の小部屋に入るなりにレイヴロン子爵は彼に怒りを向けて言い放った。

「貴様らはこの夜会がどれだけ重要なのかわかっておるのか？貴様らがたるんでいるから夜会が台無しではないか――」

「さあ、そんなの関係ないね」

　レイヴロン子爵から背を向けた警備兵から出た言葉はあまりにも以外だった。

　レイヴロン子爵はそれを聞いてさらにその顔を赤く染め激昂した

「貴様誰に向かって……」

　目の前の警備兵はくるっと振り返る

　その瞬間、彼にかかった『変化（メタモルフォーゼ）』が解除されていく。

　金髪の縮れ髪は艶やかな黒髪に。紺碧の瞳は怒りに満ちた灼熱の赤い瞳に。そして、魔血特有の陶器のような白い肌は一瞬でエキゾチックな褐色の肌に――

「ひいぃ！」

　レイヴロン子爵には彼があまりにも異形にしか見えなかった

　何かの怪物の類を目の当たりにしたような顔にだった

　それは魔法帝国の――否、アルティア大陸そのものの常識（セオリー）からかけ離れた存在。

　彼は遠い異邦人、夜美ノ民（やみのたみ）の姿でありながら、中身は自分たちと同じ魔血と同じという異形だった

「来るな！」

　レイヴロン子爵は目の前の机を倒し異形の少年から必死に逃げようと抵抗した。

　だがそれよりも早く彼は動いていた。

　その瞬間、彼の黒い刃はレイヴロン子爵の頭を一閃にした

　レイヴロン子爵はそのまま血を吹き出し床に倒れた。

　先程の一撃は致命傷までにはいかなかったが、もはや万事休すだった。

「待て…」

　レイヴロン子爵は息を絶え絶えしながら彼を見上げた

　その赤い瞳は暗闇の中で閃光をあげていた。

　レイヴロン子爵は不思議な既視感を覚えていた

　だがそれを思い出す前にレイヴロン子爵は彼によって止めを刺されてしまっていたいた。