第8話すれ違い

か、かゆい!

股間がかゆい!

目が覚めたらチンコがパンパンに腫れ上がっていた。


ーーまさか、性病!?


昨日僕は童貞を卒業した。

夢の中で。

相手はシェリーさんという金髪の熟女だ。

まさかあの人にうつされたのか!?


ーー昨日は最高に上手くいった一日だった。

なんと大水さんと携帯番号の交換をすることに成功したのだ。まだ番号渡しただけだけど。

最悪だ……性病持ちの中学生なんて、全国でも僕だけだろう。




ーー学校で渡邉に相談した。


「え!? 大ちゃんそれインキンだよ!」

渡邉は僕の性病を楽観視していた。


「そんなはずないよ。そんなんどこでうつされるのさ?」

僕にはシェリーさんしか思い当たる節がない。


「汚ない手でチンコ触ったりしなかった?」

僕は神聖なオナニーをする前にはちゃんと手を洗う。

オナニストの常識だ。


「そんなことするわけないじゃん!」


「とりあえず、病院行きなよ!」

病院に行くわけにはいかない。親にバレるのは死んでも嫌だ。


「もう……人生詰んだ……」

僕は頭を抱えて言った。


ーー


「またせんせいに嫌われた……」


「元気だしなよ! ミズっち! 男なんてその辺に腐るほどいるんだからさ!」

宮崎さんが慰めてくれる。


ーー昨日の放課後、わたしは木村せんせいに答えが出たと伝えた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「では、キミの出した答えを聞こうか。」

せんせいは表情を変えずに言った。

わたしを威圧するように。

でも、わたしは負けない!


「はい! わたしは、せんせいを幸せにしてあげたい。せいせいの子どもが欲しい。ずっと一緒にいたい……これがわたしの愛です。」

わたしの答えをせんせいに伝えた。全て事実だ。


「ちょっとは考えてきたみたいだね。しかし、学生のキミはどうやって僕を幸せにするんだい? 僕はキミとの子どもなんて望んじゃいない。ずっと一緒にいたいとも思っていない。」

せんせいは冷たい声でわたしに告げた。胸が苦しい。油断したら涙が出そうだ。


「せいせいの望むことならなんでもします! わたしの身も心も、全てせんせいに捧げます!」


「キミは愛人って知ってるかい?」


「はい、身体だけの関係の人ですよね。せんせいが望むなら、それでもいいです……」

そんな関係でも、せんせいとつながりが出来るのならかまわない。いずれわたしのことを本当に好きにさせてみせる。


「勘違いしないでくれ。キミに愛人になれって言いたい訳じゃないんだ。」


「……どういう事ですか?」


「愛人のことを、とある国の言葉で訳すと恋人になるんだ。」


「意味がわからないです……」


「つまりキミが僕に向ける愛は、恋って事さ。」

そう言うとせんせいはわたしを置いて行ってしまった。


わたしはまた一人体育館裏に残された。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ほんと、わかんないよ……」

わたしは頭を抱えて机にうずくまる。


「それにしてもあのセンセ、キザなこと言うねぇ……」


ーー話していると松本くんが来た。

彼は昨日もわたしの元にきた。

せいせいに会う約束をしてて、ピリピリしてるところにきたので適当にあしらってしまった。


「大水さん、ちょっといいかな?」

昨日は自信に満ち溢れていたが、今日は暗い顔をしている。ワン切りするって言ったきり、ほったらかしてたからだろうか。


「どうしたの? わたし、今体調わるいの……」

今は構ってあげる気力がない。

話しかけないで欲しい。


「すぐ終わるからさ、ちょっとついてきて。」

そう言って教室の外に向かって歩きだしてしまった。


めんどくさいなぁ……


ーーそしてわたしは、真夏の太陽が照りつける屋上にきた。

こいつ、何考えてんの? もうちょっと場所考えてよ!


「僕はさ。大水さんには幸せになって欲しい。ちゃんと青春して、大人になって、家庭を持って。だから、君の携帯から、僕の番号を消して欲しい。」


「あ、大丈夫。登録して無いから。」

早くしてくれ! 暑くて死んじゃう!


「可能ならば、僕の番号を書いたノートを燃やして、もう僕と関わらないで欲しい。」


「いいよ、要件はそれだけ?」


ーーわたしは急いで教室に戻った。

なんで呼び出されたのか、さっぱりわからない。

涼しい教室で冷静になって考える。


ーーあれ? もしかしてわたし、フラれた!?

話の内容を思い出すと、フラれたように感じる。

付き合ってもいないのになんで!?

考えば考えるほどイライラしてきた。

なぜ二日連続でフラれなきゃいけないのよ!


「大水さん、あいつに変な事されなかった?」

やさしいハタヤさんが心配してくれる。


「うん。もうちょっかい出して来ないって約束してくれた。それにしても屋上暑かったー!」

モヤモヤがイライラに変わってしまった。


アイツの事、ぜったいに許さない!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る