第7話エロス

畑谷さんとはうちのクラスのマドンナ的存在だ。

生徒会長を勤めており、勉強もスポーツもずば抜けて出来る。

身長は高く線の細い身体をしている。

艶やかな長い黒髪に整った顔をしていて、おそらく学校一の美少女だ。

そんな子がオナニーしてるなんて……何かの間違いではないか?

しかし、新田くんの情報は信頼度が高い。何故なら、彼は学校の至るところに盗聴器を仕掛けている。

もちろん女子トイレにも。

完全なる性犯罪者だ。

そんな彼が誤った情報を扱う訳がないのだ。


「まさか、女の子もオナニーするって本当だったなんて……」

渡邉もまだ頭の中が整理できていないようだ。


「でも、なんでハタヤンがオナニーしてるってわかるのさ。」

僕は新田くんに尋ねた。


「俺は女子トイレに盗聴器を仕掛けている。それにヒットしたのさ。」

つまり、新田くんはハタヤンのオナニーを盗み聴きしたという事だ。

死ねばいいのに。

ヤバい、立ってきた。


「今回は特別サービスしたが、次からは対等な取り引きを望む。じゃあな。」

新田くんは最後に僕たちと握手して個室を出て行った。

僕は放心状態のまま個室に取り残された。

僕は思わずチンポジをなおした。


「ヤバい、午後の授業始まるよ! 戻ろう!」

僕は時計を見て時間の無い事に気づいた。

急いで二人で教室に戻る。

僕は半立ちのまま走ったので何度もチンポジを修正することになった。


放課後ーー

僕と渡邉は一緒に帰った。

今日も僕の家でハーレムバトルをやる予定だ。

帰り道で大水さんと宮崎さんが歩いているのを発見した。

たまたま振り返った大水さんと目が合う。


「あ、ワタナベくんと松本くん、ヤッホー!」

大水さんがあいさつしてきた。


「あれ? 二人とも帰り道こっちなの?」

宮崎さんが僕たちに訪ねる。


「今日は大ちゃんの家でカードゲームやるんだ。」

渡邉が答えた。


「うわっ! あのキモいやつ? さいあくー。」

宮崎さんが本気でイヤそうな顔をする。


「キモいなんて言うなよな。ああ見えて、奥が深いんだぜ?」

普段モジモジしてる渡邉が強気に発言した。


「あんたら、あんなのやってたら一生童貞だよ?」

宮崎さんは童貞に一番言ってはいけない事を言った。


「そういうお前はどうなんだよ!」

渡邉が宮崎さんに聞きづらい事を言ってしまった。

やっちまったと顔が言っている。


「わたしは……別にいいのよ。」

宮崎さんが複雑な顔をした。


「そ、そっか……」

渡邉もどう答えればいいかわからないようだ。

「まぁまぁ落ち着いて、二人とも!」

大水さんが仲裁に入る。


「そういえば、この前TATUYAにいたよね? 何みてたの?」

この前渡邉がAVコーナーに入りたいと言い出し、二人でTATUYAに行った。その時にこの二人が居たため入る事が出来なかったのだ。

まさか僕たちに気づいていたとは……


「あれは、えっと……」

なんて答えよう。困った。


「エロースについて調べてたんだよ。」

渡邉がまたキモい事を言った。

しかし、なんとなく嘘を言ってない感じに聞こえる。


「はぁ? エロ本読んでたの?」

宮崎さんが渡邉を睨む。


「ち、違うよ! エロースというのは、愛の神様のことだよ!」

渡邉はエロい事に関しては博識だ。


「愛のかみさま?」

大水さんが食いついてきた。


「諸説あるんだけどね、ギリシャ神話に出てくる愛の神様さ。美の神アフロディーテの子どもと言われているね。」

渡邉が饒舌になる。彼は自分の好きなことに関しては雄弁に語るのだ。


「へぇー、なんかむずかしそう。」

大水さんは興味を失ったようだ。


「僕がおすすめする本はプラトンの饗宴だね。作中でエロースがどんな神様かディスカッションするんだ。あとはフロムの愛するということ、かな?」

いきなり本のおすすめをしてきた。渡邉は自分の世界に入ってしまったようだ。


「けっきょくどんなかみさまなの?」

大水さんが話を切りに入った。


「僕の意見だけど、エロースは人間と神のハーフって言うのがしっくり来たね。人間の血が入ってるから愛は醜さもあるし死ぬこともある。でも、神の血によってまた復活するし、美しくもあるんだ。」

宮崎さんは携帯をイジっている。

僕も早く帰りたいが、彼を止められるのはもう大水さんしかいない。


「ありがとうワタナベくん、参考になったよ」

大水さんがついに話を終わらせたようだ。

その後二人と別れて僕たちは家に向かった。


「ミズっち、さっきの話わかった?」


「わかんなかったよ?」


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