第6話新田くん
僕のクラスには情報屋がいる。
情報屋と言ってもゲスいネタ専門なのだが。
彼から情報を買う場合、代わりとなる情報を提供しなければならない。
もちろん金を積めば聞き出す事も出来るが法外に高い。
この前大水さんの家の場所を聞き出そうとしたら
「即金で1億万円な」と言われた。
そんな金すぐには用意できない。
そして、大水さんの家にその価値があるのかーー
僕は1億万円と大水さんの家を天秤にかけ、諦めざるを得なかった。
「大ちゃん、誰の情報聞く?」
渡邉がゲスい顔で聞いてきた。
「渡邉は誰が良いの?」
とりあえず聞いてみた。
渡邉の気になる女子に興味はないが、マナーのようなものだ。
「うーん。やっぱり宮崎さんかな? 今回の事もあるし、詳しく聞きたいよね。」
そう。この前の国性調査でホテル街に向かう宮崎さんをみたのだ。
僕たちはそれと交換する情報について話し合っている。
「それもアリだけど、僕は大水さんかな?」
もしかしたら重要な情報を聞く事が出来るかもしれない。
それがきっかけでヤれれば勝ちだ。
「とりあえず、新田くんのところで話そうよ。」
「それもそうだね。」
情報を聞く為には同価値の情報を提供しなければならない。
新田くんはパチンカスと同じで等価交換が好きなのだ。
しかし、情報の価値を決めるのはあくまでも新田くんだ。
僕たちは受け身にならざるを得ないのだ。
「新田くん、つれションしない?」
「ああ、ちょうどウンコがしたかったんだ。終わるまで待っててくれよ?」
このやり取りは、情報交換の合言葉だ。
彼がつれションに応じると交渉のテーブルに着いたということ。
そして、周りに怪しまれないようにウンコ待ちして時間がかかったと見せかけるのだ。
ーー彼が情報屋だということは一部の男子しか知らない。
新田くんは中学生にしてはヒゲが濃い。
そして彼は暇な時に自分のヒゲを手で抜いて机にくっつけるのだ。
それを見たクラスメイトたちは彼の事を養殖屋と呼ぶ。
ーー僕たち三人は体育館横のトイレに向かった。
「それで、何をチップにするんだい?」
僕たちは今、トイレの個室に三人で入っている。
新田くんが便器に座り、両手を組んだ上にアゴを乗せている。
「宮崎さんの情報なんだけど。」
とりあえず誰の情報なのかだけ伝える。
「フム。需要はあまりないな……」
彼にとって宮崎さんネタはあまり評価が高くないようだ。
「結構なスクープだよ?」
渡邉がイヤらしい顔で言う。
「……話を聞こう。」
新田くんのメガネが光る。
商売人の顔になった。
「先週の土曜日に駅裏のホテル街に男と二人で入っていく宮崎さんを見た。」
「……それで?」
新田くんが続きを促してくる。
しかし、僕たちにそれ以上のネタはない。
「それだけだよ。」
不安そうに渡邉が答える。
「そうか。なら提供出来るネタは三つだ。好きな物を選べ。」
新田くんは話を続ける。
「気になるクラス女子のおっぱいのでかさ、好きな人、現在確認されているパンツの色。以上だ。」
「えっ、それだけなの? もっと色々無いの?」
それはあまりにも酷くないか。
僕たちが提供したのは、いわばクラス女子の非処女情報だ。
そんなに安い訳がない。
「お前たちが望む情報はなんだ?」
新田くんが訪ねてきた。
「例えば、オナニーしてる女子の情報とか?」
渡邉がいい答をする。
「それだと、俺が知っているオナニーしてる女子の中から一人ランダムになるが、良いか?」
ランダムか……でも、悪い話ではない気もする。
「僕はそれでいいよ。」
渡邉に僕の意思を伝える。
「わかった。新田くん、ランダムでいいよ。オナニー女子の名前、教えて?」
はたして誰が選ばれるのか。
ドキドキする。
「畑谷さんだ。」
「「ハタヤン!?」」
マジかよ!?
畑谷さんと言えばクラスのマドンナ的存在だ。
そんなオナニーとは無縁に見える人が、まさか……
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