第4話国民の性事情

カチカチ、カチカチッ


「やっぱ今日は多いね-。」

僕と渡邉は休日を利用して駅前に来ている。


「暑くなって来たからね-。涼しい所に誘い易いんじゃない?」

正確には駅裏で、ホテル街の入り口だ。


そう。今日は月に一度の国性調査の日だ。


国性調査とは国民の性事情について統計をとり、いつ、誰が、どの時期に性行為におよんでいるかを調査し、今後の性活に役立てようとするものだ。


「まずいよ渡邉! すでに六月の人数を超えてるよ!」

そう言う間にもどんどんカップルがホテル街に入っていく。


カチカチ、カチ


ちなみに今は午後二時、一番暑い時間帯である。


「あ、大ちゃん今お一人様もカウントしたよ。後で直しといてね。」

そう。国性調査ではお一人様のオジサン達は含まれない。奴らは一年中発情しているからである。


「ごめん、暑くてぼーっとしてたよ。……あれ?」

今のカップル、弟だったような……


「ねえ大ちゃん! 今のって……」

やはり渡邉も気づいていたようだ。


「渡邉も気付いた?」


「うん……宮崎さん……だよね?」


あれ?


ーー後ろ姿を良く見るとたしかに宮崎さんだ。

しかし、今は弟の涼が気になる。

俺より優れた弟など存在してはいけない。


「今は宮崎さんより涼の方が問題だよ!」


「りょう?」

渡邉は僕の弟の事など知らない。


「僕のおとーと!」

急がなければ、チェックインしてしまう。


「大ちゃんの弟がいたの?」


「確信は無いけど、たぶん弟だった。追いかけないと!」

しかし、渡邉に止められてしまう。


「落ち着いて大ちゃん! 確信が持てないなら先に宮崎さんを追うべきだ!」

たしかにそうかもしれない。


「そうだね。宮崎さんを追おう!」

僕たちはホテル街の中に向かい走り出した。


「ねえワタナベ? 涼も宮崎さんも向かう方向同じじゃなかった?」

僕は失念していた。

ここのホテルはどれもメインの通りに面している。

であればどちらも追えたのではないか。


「仕方ないよ。緊急事態だったんだから……」

僕たちは二兎を追い一兎をも得る事が出来なかった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「大ちゃん、なかなか来ないね。」

僕たちは仕方ないので彼らを見かけた場所に戻り、ホテル帰りをとらえる事にした。



「そうだね。僕、そろそろ帰らないと。」

今日はポケモンの放送日だ。

今帰らないと、地上波で観る事が出来ない。


「仕方ない。帰ろうか……」

そうして僕たちは帰路についた。




その日の夜ーー


「いただきまーす!」

弟は何事もなかったかのように帰って来た。


そして今夕飯を食べている。


ーーこいつ、ヤルことやったらサヨナラかよ!


女の子と付き合った事など無いが、恋人とハメ有りデートした時は別れを惜しんで帰りが遅れるものではないのか。


弟は畜生か何かだ。


あの時見かけたのが弟だったかはわからんけど。

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