第2話伝説のブラコン使い

「くそーまた負けたー!」

僕は悔しくてカードを机に投げつけた。


「大ちゃんはさ、M属性のマンピーをハレメンに入れるの止めた方が良いよ。」


「えー……でもさー……」

僕はM属性のマンピーが好きなのである。


理由は原作の主人公が愛用しているからーー


そもそもハーレムバトルとは、週刊少年ステップで連載中の『山田くんと七十七人のマゾ』で主人公たちが遊んでいたものである。


物語の主人公山田は、全属性中最弱のM属性マンピーを使ってライバルを倒していく。

僕はそれを見てM属性を多用することにした。


「まあ、ハレメンにM属性入れて今の強さなら大したものだと思うよ。頑張りなよ!」

渡邉に励まされた。


なんか腹立つ。


しかし、ハーレムバトルにおいて渡邉は日本でも有数のハーレマーだ。


このあいだの公式戦決勝でも熱いバトルを繰り広げていた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「エロフの剣士を召喚!! エロフの剣士を生け贄にし、封印されし右手を召喚する!!」


ーー出た!渡邉の必勝コンボだ!!


「甘いな……あマゾねすの戦士を生け贄にしこいつを召喚する。いでよ! 青白の弟愛姉ーーブルーアイズホワイトブラコン!!」


青白の弟愛姉ーーブルーアイズホワイトブラコンだ!


渡邉の対戦相手の横山君は、最強のブラコン使いだ。

ブラコン属性は全属性中最強と言われている。

トラップや魔法が殆んど効かないのだ。


「くっ……! ゴッドフィンガー!!」


「……効かんな」


青白の弟愛姉の慈愛の効果で全ての特殊効果が無効化された。


「さらに!! 赤黒の兄愛妹ーーレッドアイズブラックブラコンを召喚!!」


ーーまずい!!


ブラコン属性が二体もいたら、次のターンで決着がついてしまう。

ブラコン属性に対抗するには、ブラコンの弱点属性のシスコン属性を使うしかない。

しかし、シスコン属性の逆ハーレムシリーズを使うハーレマーは殆んどいない。


「くっ、くそっ! いけ! クリ棒!!」


渡邉はシスコン属性最弱のクリ棒しか持っていない。


「無駄だよ。」

ブラコン対策にハレメンに入れてあったのだろうが、すでに勝敗は決している。


ーー結局そのまま横山君に押しきられ、渡邉は負けてしまった。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


あれは凄いバトルだった。

しかし、相手の横山君が強すぎた。

横山君は公式戦参加者の中で唯一の成人である。

歳は今年で三十一になるそうだ。


一パック五枚入りで百五十円するカードを大人買いしている時点で勝ち目はなかったのだ。

ーー渡邉は今、ブラコン対策のために少しずつ逆ハーレムデッキを作っている。

渡邉のハレメンが、どんどん男臭くなっていっている。

全てはブラコン使いの横山君に勝つためにーー


正直気持ち悪い。



「じゃあ、また学校で。」


「うん。さようなら。」


ーー外が暗くなって来たので、渡邉は帰って行った。

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