女神降臨(おかわり)


 とりあえずアテナには正座させて、ジークとエリーゼさんには椅子に座って貰った。

 二人とも死ぬほど居心地が悪そうだけど。


 ちなみに私はアテナの前で腕を組んで仁王立ちしている。


「おい最高神」

「サーイェッサー!」

「この二人は私の友達だ。いいな?」

「サーイェッサー!」

「反省してるか?」

「サーイェッサー!」


 ……ふむ。反省してるなら許してやるか。

 つーかこいつ、本当に偉い神様だったのか。

 まったく実感ないんだけど。


「で、そっちの二人。こいつは私の友達だから」

「あれ、私って友達なんですか?」

「サンドバッグじゃない事は確かね」

「この主人公凶悪すぎませんかね!?」


 何だよ主人公って。


「……その、事情は理解したが、本当に態度を改める必要は無いのか?」

「ジークの敬語とか気持ち悪いからやめて」

「分かった。ならそうしよう」


 うん、そっちの方が楽だわ。

 別に私が偉い訳じゃないんだし。


「エリーゼさんもいつも通りでお願いします」

「ちょっ、お姉様! 私に敬語はやめて欲しいですの!」

「えぇ……だってまだ警戒してますし」

「お姉様ッ!?」

「冗談よ」


 アテナにタメ口なのに自分が敬語使われるのはしんどいだろうからね。

 いや、警戒してんのは本当だけど。


「お姉様、意地悪ですの……でもそこもしゅきですの♡」


 メンタル強ぇなおい。


「と言うかリリィ、エルンハルトはこの事を知ってるのか?」

「ん? いや、知らないんじゃない? 特に何も言ってないし」

「お前な……ちゃんと教えてやれよ? 後で事実を知った方がダメージでかいんだからな」

「あーそっか。じゃあ次会ったら言っとくわ」


 たくさんお世話になってるし、迷惑かけたくないもんね。


「あの、リリィさん。私は帰っても良いですか?」

「あーうん。えっと、来てくれてありがとね」

「これがツンデレ……悪くないですね!」


 誰がツンデレだ。変な属性を付けるんじゃない。


「ではアナウンスだけ残して行きますね」

「アナウンス?」


『リリィ・クラフテッドはレベルが上がった!

 リリィ・クラフテッドはレベルが上がった!

 リリィ・クラフテッドはレベルが上がった!

 リリィ・クラフテッドはレベルが上がった!』


 うわ、何だこの声。どっから聞こえて来てんだ?


「え、私レベル上がったの? てか何で四回言った?」

「私のレベルが高いので攻撃当てるだけで経験値入るんですよ。今までの分と合わせてレベルが4上がりました」


 ほう。じゃあたくさんデコピンしたらその分レベルが上がるのかな。

 

「あの、リリィさん、今なんか邪悪な事考えませんでした?」

「え? そんなことは無いけど」


 純粋な好奇心から来る探究心だよ。


「うーん……とにかく私は帰りますね。また暇な時にでも呼んでください。んちゅっ♡」


 何故か私に向かって投げキスをした後、アテナはその場で煙のように消えて行った。

 金髪碧眼美女の投げキスなのにまったく嬉しくないのは何故なんだろうか。

 ……まぁ、アテナだからなぁ。


 あ、しまった。遠征の話すんの忘れてたわ。

 今度ちゃんと伝えておくか。

 それはさておき。


「んじゃ今日は解散で。戻ったらまた相手してあげる」

「おう、次こそは勝つ」


 いつも通りの感じで不敵に笑い返してくれるジーク。

 態度が変わらないのは本当に嬉しい。

 こいつ本当にイケメンだな。


 そして。


「お姉様、私はパジャマと枕を持って来てるから大丈夫ですの」


 大きな枕を抱きしめて可憐な微笑みを浮かべるエリーゼ。

 但し、目は濁ったハートのままだ。


「ジーク、連行して」

「責任を持って回収する。またな」

「あっ、ちょっ、離すですの! お姉様との甘くて濃厚な夜がぁぁぁ!」


 爽やかに笑うイケメンと共に。

 ロリ痴女、後ろ襟を掴まれて退場。


 あーもー、何か疲れたなー。

 めっちゃ濃い一日だったわ。

 あ、てかレベル上がったとか言ってたな。

 寝る前にステータスだけ確認しておくか。


「『ステータス』」


 お、でたでた。ちゃんとレベルが5に上がって……いや待てって。

 なんだこれ。



 名前:リリィ・クラフテッド

 種族:人間(まじ?)

 年齢:18(変更可能)

 性別:女

 職業:無職

 レベル:5


 STR:3(+130)

 VIT:5(+130)

 INT:11(+50)

 DEX:8(+50)

 AGI:4(+130)

 LUK:-15


 スキル

 愛Lv1 勇気Lv1 宵闇Lv1【New!】 終焉Lv1【New!】

 ウサギLv5(MAX) チベットスナギツネLv5(MAX)【New!】

 格闘Lv5(MAX) 縮地Lv5(MAX)【New!】

 マクドナ〇ドLv1

 成長速度20倍 ステータス異常無効

 魅了効果5倍【New!】


 称号

 拳を極めし者

 女神アテナの加護を受けし者

 女神ライランティリアの加護を受けしもの【New!】

 セカンドアシスタント



 はい、息を大きく吸い込んでー。


「ライラァァァ! 出て来いィィィ!」


 本日二度目の魂の叫びを上げた。

 ふっざけんな! お前もかよ!

 LUK以外全部魔王超えてんだろうが!


 そして、私の雄叫びに応えて。


「はい。どうしました?」


 黒い髪と黒いローブを音も無くふわりと舞わせて、ガラス細工のような女性が姿を現した。

 相変わらず何者も越えられない程の美しさを誇り、しかしその表情は水面の様に静かだ。

 女神ライランティリア。

 今日この場に二人目の神が降臨した、次の瞬間。


「いいからそこに座れ」


 とりあえず、有無を言わせずに正座させた。

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