第6話 通天閣スカイビルを追い越してあべのハルカス300笑う

 伊丹も、尼崎も、兵庫県だし。

 意外に思われるかも知れないけど、私は一回も通天閣に行ったことがない。どころか、超がつくほど過保護な父親に、「あの辺りは危ないから近寄ったらあかん。筋一方入ったら、怖いで」と言われて育った。おかげで、三十過ぎるまで、通天閣の辺りには行ったことがなかった。天王寺動物園の近く?に、動物園ファンが集まるお店と言われているギャラリー兼カフェがあって、あそこに、ホッキョクグマの親子、バフィンとモモを彫ってもらったグラスを取りに行ったことがあるくらいで、今でも、通天閣は、私にとって、上るものではなく、眺めるものだった。

 ホルモンも、一度も食べたことがない。鶴橋の保護猫カフェに、引き取り希望の子猫を見に行くまで、ホルモン焼きのお店も見たことがなかった。

 ミックスジュースは、カルピスより馴染みのある飲み物ではなかったし。家にモロゾフのプリンの容器はあるけど、タコ焼き器はない。

 私は一般の、どちらかというと下級クラスのサラリーマンの娘だけど、誰がつくったんだ?その大阪のイメージ。

 そんな私が人に勧めたい場所なんてない。

 大阪中央郵便局も建て替えてしまったし。

 建て替えてはいるけど、建て替えてないように見える大同生命大阪本社ビルとか?

 ーー子どもの頃、JR天王寺駅を歩くのが嫌だった。床に何か撒いてあったのか、下を向くと目がチカチカしたし、天井から、天女がぶら下がっていたので、落ちてきそうで怖かった。デパートは高いのでたまにしか行けなくて、ステーションと呼ばれる、陶器や肌着などの生活用品がお手頃価格で充実してたところによく行ってた。お大師さんの日の辺りには、商店街も、ステーションも、おばあちゃん達であふれ、賑やかだった。

 私は普段着の顔は大阪しか知らないけど、大人になって初めて、JR天王寺駅やあべ地下や、今はなくなってしまった泉の広場などで、街娼と呼ばれるお姉さん達が立っていることに気づいた。その中には、露出度の高い格好をした若い女性だけじゃなく、両手に荷物を下げた薄化粧のグレーヘアの女性もいた。

 きれいになった街は嫌いじゃないし、過去を惜しむ気もないけど。

 ステーションがミオプラザ館になる前は、茶色のサングラスをかけたおっちゃんが、鳥を腕にとまらせるように、赤い帽子をかぶせた物怖じしない猫を腕にのせてやって来て、通行人達に見せていた。みんな嬉しそうに、ケイタイで写真を撮っていたけど、そのおっちゃんは、猫を通行人達に見せて、スターのように質問されるだけで、満足しているようだった。

 そういった光景が見られなくなったことを少し残念に思う。



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