間話:彼女の料理

 今日は、男の残念さを再認識した1日だった。というのも、今日はテスト終わりに文化祭の出し物を考えようという集まりだった。

 それにも関わらず、男子たちはメイド喫茶以外に案を出さない。全員がメイド喫茶に手をあげる。無駄に揃った動きが妙に腹が立つ。

 樹も同じ気持ちなのだろうか?少し気になる。

 帰り道を一緒に帰る途中で、聞いてしまった。彼の答えは私の予想を超えるものだった。


 私の服装を全部見てみたいと言われるとは思わなかった。ちょっと、ううん、かなり嬉しい。彼に聞かれてしまったかも知れないが、それでもいいと思った。


 次の日のHRでもう一度採決を取るが、結果は変わらずメイド喫茶だった。知ってはいたけどね。抽選に落ちないかしら。

 ふと、彼もこのままなら、メイド服を着る事になる。そのことについて聞いてみると、彼は着ないという。小声で話していたはずなのに、クラスの全員がこちらを向く。みんなが彼に着てほしいですと言う中で、彼が爆弾を投下した。


「えっと、別に着てもいいんだけど、このクラスで、どのくらいの人が料理できるの?」


 思わず、目をそらしてしまう。さやかがその話題を議題にするが、彼の独壇場だった。お店を回しやすくする料理や、メイド喫茶らしい料理の代案など、多くの意見をだし、メイド服の件は有耶無耶になった。

 紗夜以外にも料理経験者がいたので、後日練習する事になった。そこには私も参加させられている。どうしようか。


 なんとかなるかと思ったが、全くならなかった。


 生は危ないから、火を強くするのよね。

「冬花、火が強い」


 えっと、薄力粉が30gだから、どれで測ればいいのか。まあ、目分量で大丈夫…かな

「トーカちゃん、分量!多いよー」


 砂糖がいるのだから、用意しないと。あれか、私は棚においてある砂糖をとって入れる。

「九条さん、それは塩です!砂糖しか出てなかったのにどっから持ってきたんですか⁉︎」


 全然ダメだったので、私は遠くの机に座らされている。恥ずかしいため、顔をあげることができないが、みんなの料理をする姿は見たいので、チラチラとだけ見ておく。


 そんなことをしている間に、今日買っていた分の材料を使い切ったので、終わる事になった。材料をいくつか無駄にしていることを気にしていると、みんなから慰められる。それに、料理ができないことで、近くに感じると言われてしまった。

 いったい私のイメージはどんなものだったのかが気になり、聞いてみると、才色兼備、容姿端麗、文武両道という言葉が出てきた。それは紗夜だって同じだろうと言うと、すぐさま否定されてしまった。


 彼はまた、たぶん自分を否定している気がする。


「私も今日から料理頑張るわ」


 私も苦手を直す努力をするわ。だから、樹も頑張ってほしいと思う。この気持ちが彼に伝わってくれたらいいな。

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