28.文化祭の出し物

 体育祭が終わってすぐに中間テストの時期が来る。

 

 テストが終われば、大きなイベントである文化祭が来るためか、今回はみんなの集中力がすごかった。

 

「じゃあ、クラスの出し物を決めよーう!」

「「「「はーい!」」」」」


 ノリノリでクラスに語りかけたのは、文化祭委員であるさやかだ。そのノリに合わせてか、クラスのみんなのテンションが上がっている。


 テスト終わりであるのにみんな帰ることもせず、こうして集まっているのは、より良い文化祭を楽しむために、自主的に出し物を考えるためだ。


「文化祭の出し物だけど、飲食店の数は多くなるので、絶対に抽選になると思います。なので、別のものになる可能性があることは注意しておいてください」


 やっぱり、飲食店は人気があるので、数が多くなってしまう。そうなってしまえば、調理実習室の状況や、衛生面の管理が難しくなる。そのため、抽選によって決定するのだろう。


「なので、予算や学校にある調理器具、使用できる量を記載したプリントを配るので確認してくださーい。それ以外は持ち寄りとかは学校側に言えば可能なものは可能なので、相談しに来てください。それではやりたい出し物がある人ー、挙手ー!」


 さやかの掛け声に、みんなが一斉に手をあげる。このイベントが重要なものだからだろうが、授業中でもこんな風に積極的に手をあげたら良いのに…

 やっぱり、文化祭はみんなにとっても大きいイベント行事であり、楽しみにしているんだろう。私も楽しみだ。


「はい!喫茶店がいいと思います」

「はいはーい!定番の喫茶店もいいと思いますが、メイド喫茶がいいと思います」


 そう言って、みんなが冬花をみる。どうしてだろう、みんなが冬花を見ているのが面白くない。けれど、口に出すことでもないので、黙っておく。


「予算が限られてくるけど、候補としてね」


 そう言って黒板に喫茶店、メイド喫茶と書かれる。


「じゃあ、次ー」


 二つしか挙げられていないのに、男子の手が全部降りた。その空気の中で、女子が次々と、お化け屋敷やアイス、カレー、焼き鳥など、意見を挙げて、黒板を文字で埋め尽くしていくが、男子は一言も話さない。


「やっぱりメイド服が…」

「ああ、一生に一度のチャンスなんだ!」

「ああ、絶対にメイド喫茶にしてやる!」


 こそこそ話しているつもりなのだろうが、聞こえてしまっている分、余計に残念である。


「じゃあ、とりあえず、多数決を行います。これは決定ではないことに注意してください。決定は明日にもう一度やります。じゃあ、メイド喫茶がいいと思う人ー」


 男子が全員無言で、手をスッとあげる。私たちのクラスは全員で31人であり、男子の人数は16人だ。この時点で、クラスの過半数が過ぎた。


 文化祭の出し物は多分あの調子だと、メイド喫茶になるだろう。冬花と一緒に帰りながらも、今日のことを考える。


「樹は、私のメイド服、みたい?」

「…うん。でもメイド服というよりは、冬花はなんでも似合いそうだから、全部見てみたい…けど」

「けど?」

「少し、冬花のメイド服は誰にも見せたくないと思っちゃった。ごめんね」

「謝らないでいいよ。その…嬉しかったから」

「えっ」

「じゃあ、ここでね。また明日」


 冬花が最後に言ったセリフは聞きづらかったけれど、確かに聞こえた。

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