21.夏休み明けの教室
夏休みも終わり、月日は9月に入ろうとしているが、暑さはまだまだ続いている。
今まで快適な空間に長いこといたせいか、学校にいくまでの道のりですら気が遠くなる。
教室に着き、扉を開けると、クーラーの涼しい風が体に当たって、気持ちいい。
すぐに扉を閉め、自分の席に向かい、座ると廊下から大きな声が聞こえてきた。
「夏休み終わったのになんでまだこんなに暑いのー」
たぶん、さやかだろう。夏休みにたくさん一緒に遊んでいたのに、懐かしく感じる。
学校だからかな?
ガラッと音がし、扉が開く。
「やったー、トーカちゃん、まだクーラーついてるよ」
ラッキーといいながら、入ってくるさやかの後から冬花も入ってくる。
「本当。ないかもと思っていたから、良かった」
今日は夏休み明けの登校日なので、全校集会を終えて、あとは担任によるクラスの連絡が終われば終了となる。
だけど、明日にはテストが控えているため、みんなすぐに帰宅する。
「テストやーだー」
机に突っ伏した状態でさやかが嫌そうに呟く。
「今回のテストは新しい所が出ないから、いつもよりは楽なんじゃないかな?」
「それは紗夜ちゃんが優秀だからですー、一般的にテストに楽なものは一つもありませーん」
「そう…なのかな?」
「そうなの!テストはテスト!全部嫌なの!」
そう言い切るさやかにどうすればいいのかわからず、冬花の方を向くが、首を振られてしまった。
さやかがここまで嫌がるのはやはり勉強が好きじゃないことが一番の要因なのだろうか?
どうしようかと考えていると、冬花が助け舟を出してくれる。
「…さやか、勉強を頑張らないと、私たちと一緒に遊べる日が少なくなってしまうかもね」
「「えっ、どうして?」」
「遥さんが、これ以上成績が悪くなると、塾も考えるって、この前、メールした時に…」
そう言って冬花はスマホを見せる。さやかがスマホを奪い取り、じっくりと見つめる。
「…なんで、トーカちゃんがお母さんとメールしてるの?」
恐る恐る訪ねるさやかに、僕もそう思う。
「それは、大切な娘さんを預かるのだから、連絡ぐらいはしないと…ね」
「そんなー」
冬花の発言に、一度顔を上げていたさやかはもう一度机に顔を伏せる。
「みんなで一緒に遊べなくなるのは嫌だな…」
そう思っていると、急にさやかが起き上がり、帰る準備をする。
「ごめん、私頑張るから!」
そう言って帰るさやかを見送る。どうして急にやる気になったのかがわからない。
「あなた…」
「えっ、私何か言った?」
「みんなで遊べなくなるのは嫌っだって言ったでしょ?」
「口に出てたの!?」
自分の口をふさぐが今更だ。急に恥ずかしくなる。
「まあ、あなたらしいかもね。それにさやかもやる気になったからいいんじゃないかな」
「でも、塾は…」
「ああ、あれは嘘よ。遥さんが発破をかけるのに使って欲しいってくれただけで、本気じゃないらしいから」
それなら本当に良かった。
「良かった。さやかと遊べなくなるのかと思って心配しちゃった。」
「……それは私でも?」
「もちろんだよ。私には冬花もさやかも必要な人で、大切な人なんだから」
僕も成績を落とさないように、帰って勉強しないと!
そう意気込んでいる間に、冬花が真っ赤な顔をしていることには気づかなかった。
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