20.夏休みの終わり
夏休みの最終日になり、僕たちはまた3人でさやかの家に来ている。
「明日から学校やだー、もっとやーすーみーたーいー」
「そんなことを言っても変わらないでしょう、諦めなさい」
「だってー」
さやかが頬を膨らませて言う。言わないが、僕もそう思っている。
今のこの時間が続けばいいのに…と。そんなことができるわけないのに願ってしまう。
僕は願ってばかりだ。
紗夜お姉ちゃんの時も、今も、僕は自分で動こうとせずに他人にすがった。
自分で死ぬ勇気がないから、他人の手で殺されたいと思った。
でも、これからは自分で動いて望みを掴んでいきたい。
「夏休みが終わったら、今度は体育祭や文化祭だね」
二人と一緒なら、これからも楽しいことがあると思える。
生きてて良かったと思うことができる。
言い争いをしていた二人から驚いたような視線が向けられる。
何か変なことを言っただろうか?
「あれ?違う?」
他にも何か近くに学校行事があっただろうか?
「…いいえ、けど、あなたからそんな言葉を聞けるとは思っていなかったから…」
「そう!紗夜ちゃんが自分からイベントの話をするのは初めてだったから、びっくりした!」
二人の言葉に、そんなに驚くことだろうかと一瞬思ったが、言い返せない。
今まで、イベントなんて興味もなかった。自分が関わることはないと思っていたし、私だけが楽しむなんてできないと思っていた。
けれど…
「そうだね。いろんなことを楽しみと思えるようになったのは二人のおかげだよ。二人がいなかったら、きっと、学校行事とか遊びとか、何も楽しむことは無かったと思うから」
自分を押し殺して、紗夜お姉ちゃんに成り代わろうとした。誰も紗夜お姉ちゃんや僕を知らないところで、生きようとしていた。
そんな僕を見つけてくれた冬花。
誰とも関わらないように、誰の記憶にも残らないように生きようとしてきた。
そんな僕の手を引っ張ってくれたさやか。
「私には何もなかったから、そんな私の隙間を二人が埋めてくれた。だから、ありがとう冬花、さやか」
心からの感謝を二人に。二人は黙り、私に背を向ける。そして、何か話した後にこちらに振り返る。
「「どういたしまして」」
そう笑顔で言われ、言って良かったと思う。僕には何もないのはこれからも変わらないかもしれないけれど、これからは二人のように、僕にも何か見つけることができたらいいなぁ…
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