19.ゲームセンター
さやかの宿題も終わり、ゲームセンターに行くことになった。
「紗夜ちゃんは初めてだと思うから、一緒に回ろうか?」
「さやか達は行きたいところとかないの?」
「別にないから、一度みんなで見て回りましょうか」
「そうだね。別にやりたいものとかはないし、そーしよー」
ゲームセンターの中を見て回る。フィギュアやぬいぐるみ、お菓子がいっぱいあって驚いた。
色々と見て周り、足を止めてしまう。
「どうしたの紗夜ちゃん?何か気になるものでもあった?」
僕が足を止めた所には、お姉ちゃんが初めて自慢してきたうさぎのぬいぐるみが置いてあった。
「紗夜はこれが気になるの?」
「あっ、このぬいぐるみー、まだ新しいのが出ているんだ」
「さやかはこれ知ってるの?」
「優くんのお姉さんがね、このシリーズが好きで、仲良い人にプレゼントしたりして布教してるんだー」
「そ、そうなんだ。すごいね。そのお姉さん」
「それで、紗夜ちゃんもやってみる?」
「他に気になるものもなかったし、一度やってみようかな」
初めてのUFOキャッチャーに少しドキドキする。
「お金を入れて、ボタンの上に矢印があるでしょ。その向きにアームが動くから、そのアームでぬいぐるみを狙うの」
「わかった。やってみるね」
お金を入れて、ボタンが光る。まずは右向きに動かす。ボタンをポチポチしても動かない。
不具合?
何度も押していると、苦笑いをした冬花に声をかけられる。
「紗夜、ボタンは長押しなの、一度話すとそれ以上その向きは動かないわ」
そんな…
慌ててさやかを見ると目を逸らされた。
「ごめん、もっとちゃんと教えるべきだった」
「ううん。私ももう少し質問すれば良かったから」
「とりあえず、動きの練習としてこのままやってみましょう」
縦方向の移動を今度はしっかりと長押しで調整してみる。
なんとなく動きはわかったかな。
「じゃあ、もう一度やってみるね」
今度は最初から長押しでやる。うまくぬいぐるみの所に調整できた。
「UFOキャッチャーはすぐには取れないものだから、少しずつずらすようにやっていくの。だから、一発で撮ることができなくてもそんなものだから…」
さやかがそんなことを言っている間に、アームがぬいぐるみをしっかりと掴む。
ぬいぐるみを持ち上げても、アームから落ちる気配はない。
そのまま景品を手に入れることができた。
「…すごいね」
自分でも驚いた。もう少し時間がかかると思っていたが、すぐに取れてしまった。取れたうさぎのぬいぐるみを見る。
泣いてはいけない。
「いいでしょ、このうさぎ。友達がゲームセンターで取ってくれたんだ。これはいくら樹でもあげられないけど、今度お姉ちゃんと一緒にゲームセンターに行こうね」
「その時には樹ちゃんの分をお姉ちゃんが取ってあげるから」
「約束!」
紗夜お姉ちゃん、僕、友達とゲームセンターに来たよ。うさぎのぬいぐるみも自分で取れたよ。
だから、約束は破ってないからね。
「…樹、大丈夫?」
冬花が小声で呼びかけてくれる。
「うん。大丈夫。このぬいぐるみは思い出のものだったから、取れて嬉しかっただけ」
冬花は僕の顔をじっと見つめる。少し恥ずかしい。
「…嘘は言ってなさそうね。ならいいわ」
「紗夜ちゃん、次はこっちのをやろ!」
さやかに手を引かれ、次の台に連れて行かれる。
今までのゲームを挽回するかのように、ゲームセンターでは景品をよく取ることができた。
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