間話:彼女の考察
「来週から中間テストがあるからしっかりと勉強しておけよ。うちの学校は順位が張り出されるからな。気をつけろよ」
先生の声に生徒たちはみんな不満の声を上げる。いつもしっかりと勉強していれば、テストなんてただの確認作業だと私は思っている。
まあ、テスト前だからいつもより勉強はするけど。そう思いながら、帰る準備をしていると、さやかから声をかけられる。
「トーカちゃん、勉強教えてー」
「1人で勉強しなさい。そしてわからないところがあれば、持ってきてくれれば教えてあげるよ」
「そんなこと言わないでー。紗夜ちゃんも誘って勉強会をしよーよ」
そんなことを言われ、少し考える。私が断れば彼がさやかと二人きりになってしまう。
女子に何もするつもりはないと言っていたが、二人きりになった時、彼が何をするかわからない。
それだけは絶対に阻止しなくちゃいけない。けれど、これは彼の秘密を少しでも知ることができるかもしれない。
「櫻井さんが来るのならば、参加するわ」
「わかったー。今から誘ってくるから待っててー」
そう言って、さやかは櫻井さんを誘いに行く。様子を見ていると、彼は少し思い詰めている様子で、さやかが話しかけていても一向に答える様子がない。
彼はたまにあのように、自分を追い込んでいるような気がする。それは、彼の秘密の部分なのだろうか。
彼が何を考えているかはわからないが、彼が隠していることが解決すれば、普通の男子に戻るかもしれない。そのために、私は彼の秘密を知りたい。だから、私はさやかの援護をする。
「別にいいじゃない。あなたは1人じゃないと勉強ができないって言うわけではないでしょ」
そう言うと彼は観念したようだった。私の家でも大丈夫だが、今彼と母を合わせたら何を言われるかわからない。なので、無理矢理にでもさやかの家にさせる必要があった。
さやかの家に行くことが決まり、今私たちはさやかの家の前にいる。
さやかの母親である遥さんと挨拶をし、家に入れてもらう。
集中して勉強をしているとさやかが音を上げる。2時間は集中していたらしい。
さやかがゲームをしようと誘ってくる。私は久しくやっていなかったが、彼は初めて見たようなので少し説明し、やってみることになった。
彼を真ん中に、彼の左を私、右をさやかが座ることになった。
レースが始まり肩に何かがぶつかる。見てみると彼が傾いていた。そして次のカーブの時、今度はさやかの肩にぶつかっている。
勝負はどうでもいいので、私はその微笑ましい姿を見ておくことにした。
「…コンピュータにも負けた」
そう呟く彼を少しからかいたくなり、カーブの件について少しさやかと一緒にいじってみる。少しやりすぎてしまったようで彼は拗ねてしまった。
「もう休憩は終わり、勉強の続きをする!」
そう言って帰るのではなく、勉強をしようとする彼を可愛く思える。
さあ、私も集中して勉強しよう。勉強会は夕方になるまで続いた。
中間テストが終わる。勉強会でいつもより集中できたおかげか、いつもよりもできがいいような気がする。
そう思っていると、さやかが彼に絡んでいる声が聞こえる。またいつものやつだと思い、私もその話に入ろうとする。
けれど今回は違った。さやかの言葉が彼の秘密に少し触れたようだ。
彼の言葉を思い出す。
「別に何もないよ。ただ、私はいい成績を取らないといけないから…」
両親が厳しいのかと聞いてみると、彼はそうと答える。けれど、私は彼が嘘を言っているというよりは何か誤魔化そうとしているように感じた。これ以上今ここで触れたら、もう彼の秘密を知ることができないのではないかと感じる。
私は一体誰と話しているのかがたまにわからなくなる。今笑っている彼が、本当の彼なのか?
私は本当の彼を知ることができるのだろうか?本当のことを知った時、私は彼とどんな関係になるのだろうか?
まだ先のことを考えながら、ただ彼のことを見続ける。
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