間話:彼女は気付く
Side 九条冬花
私は男が嫌い。だって男は裏切るものだから。私の母も裏切られた。浮気をされた。
お母さんは傷ついているはずなのに、憎んでもいいはずなのに、あいつの血が流れている私のことも愛していてくれている。
それを感じることができる。けれど、そんな環境のせいなのか私は男嫌いになった。
それでも困ることは何もなかった。
お母さんのことを考えると普通に恋をするということを考えることもできない。
だって、お母さんのように裏切られると考えてしまうと、そんな気にはならない。
お母さんはよく、「私は騙されちゃったけど、世の中そんな人ばかりじゃないんだから、冬花は好きな男の子ができたら、私のことは気にせず、頑張りなさい」と言う。
だけど、私はなぜお母さんがそんなことを言えるのかがわからなかった。
私の容姿に対し、下心を抱え、話しかけてくる男を好きになることは絶対にないし、私から男に関わろうとする未来を考えることもできない。
今日から新しい高校に通うことになる。あいつと離婚し、お母さんの実家にいくことになったので、知っている人がいないのが清々しい。
教室に入るといつもと同じ視線を感じる。私の容姿は母に似て、綺麗らしいが、そんなことはどうでもいい。
もし、こんな容姿じゃなかったら男どもが関わってこないのではないかと考えると、嫌に感じる時もある。
容姿に関しては、何を言っても仕方がないし、見られることはいつものことなので気にせず、自分の席を探し向かう。
席に座ると話しかけられた。声の方を向くと、喋りかけてきた女子生徒の他に男が目に入る。
その男は女子生徒の制服で普通に過ごしていることに驚いた。
制服の他にも見た目は完全に女子だが、何となく男だと感じる。気のせい?
もう1人の女の子がいうには、そいつの名前は紗夜と言うらしい。
女っぽい名前だが、実名だろうか?私の勘違いだろうか、それとも私欲を満たすための偽名なのだろうか?
「あなた紗夜って言うの?」
考えているうちに声に出していたようだった。慌てて何か言い分を考えると、そいつは不思議そうに変だったかと聞く。
まるで本当の自分の名前であるかのような反応に私はまた少し驚いた。そいつを男と感じるのは自分だけなのだろうか?私が考えすぎなのだろうか?
このままでいるのは少しモヤモヤする。間違っていれば謝ればいい。けれども、本当にそいつが男ならば関わるつもりはない。
だから、私はそいつに声を掛ける。
「私は男のあなたなんかとよろしくするつもりなんてないから」
これで、反応を見るつもりだったが、そいつはびくりとし、ひどく焦っているようだった。
私はそいつが男であることを確信した。
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