第19話奴隷たちの未来について

「ああ。俺が自分の手でその世界を完成させるさ。どんな手を使ってでも。最初は、平和的な手段を使ってだ。」

マーカスはその答えを聞いて、少し安心したようだった。


ルーカスを見ていて気付いたことがある。彼は、この中でリーダー的な存在だということだ。別に、役職だとか地位だとかで表面的に偉い、というわけではないのだろう。彼に対して、ドラゴンが役職名で呼んでいるところを見たことがない。たぶん、彼に対して、何かしらの尊敬の念をドラゴンたちは抱いている。自分が思い描く理想のリーダーは彼。なのかもしれない。


で、ドラゴンに誘拐されて三日が経った。衣食住は保証されているが、暇なので、恐る恐る街に出る。いつになったら返してもらえるのかな~。ルーカスには、怖くて言えねえなあ。

「お、ごめんなお兄ちゃん。上空に気を付けて。」

早速、踏まれそうになったよね。

「ど、どうも。」


一苦労した後、武器屋についた。なかなかに難しいミッションだった。そんな感じでたどり着いた武器屋もよく考えれば、、、、サイズもドラゴン用に大きいものばっかりだ。

「無駄足すぎたな。帰ろう。」

また、あの道を通るのは骨が折れるが、、、

「もしかして、人間かい?」

優しそうな声が聞こえた。声の主は、老いたドラゴンであった。うろこには傷と、肌には皺が。

「はあ。そうですが。」

「ハハハ、なぜか人間がめっきり来なくなってね。」

そういって、静かにコロコロと笑った。

「ここに、人間用の武器があるよ。もう私が生きている間に人間が来るかどうかわからないから、欲しいものは全部あげよう。」

老ドラゴンの手が、店の奥のカーテンへと延びる。そのカーテンをさっと、取ると古くて、だがどこか魅力的な武器が現れた。

傷がついて、今にも零れ落ちそうだが錆一つついていない剣。柄、棟両方に血がこびりついた斧。真っ二つに割れている弓。

「どれもなじみ深い武器だよ。持ち主は死んでしまったがね。」

試しに、剣を持ち上げてみる。

「重っ!!!」

持ち上げるだけならともかく。これを振り回すのは無理だな。

斧も無理だろうな。使えるなら、、これか。

「小刀。」

鏡のように、小刀の鋼に自分の顔が映る。そして、きらりと光る刃。

「これをもらうわ。」

「うん。小柄な君には合っているだろう。」


マーカスとレイはそれぞれ、ドラゴンの村々でやりたいことをやっているようだ。マーカスは逞しくなっていたし。レイは、傷が増えてきた。


「なあ、いい加減帰っていいか?」

それは、鉄砲を撃っても彼のうろこに傷がかすってしかなくなった時だった。

「もう、何発打たれても大丈夫だろ。死なないよ。」

「そうだな。もう鉄砲はいいだろう。」

ため息をついた。

「人間との戦争とは。避けたい未来ではあったがもう避けられる気はしない。魔王との対戦も迫っているのに。」

これは聞かなかったことにしておこう。


そうして、小刀をもらって僕たちは帰還した。

「え~。また、乗るのかよ。あ、歩いて帰りたい。」

「歩いて帰ったのなら、1年はかかるぞ。それでもいいのか??」

「レオさん!!ちょっと我慢すればいいだけですから。」

「れ、レオ。」

そっとドラゴンの背に乗った。

「いやだなあ。優しく頼むよ。」

その甲斐虚しく、俺は10分で意識を手放したのだった。


さて、読むか。手に持った本を見つめる。

「ドラゴンについての神話まとめ」

それが今から読もうとしている本だった。別に、ルーカスの言っていたことが気になって、とかではない。こういう本は、普通母親に読み聞かせをしてもらって覚えているらしいのだが(レイ談)、自分はそういう経験がないので読んでみた方がいいだろう。


特に、目を引いたのはこの部分だった。

勇者対魔王の戦い

昔々のことです。モンスターの中から、モンスターを率い、人間と戦うものが現れました。彼らは魔族といい、恐ろしい容姿で、人間並み、いや人間以上かもしれない知能と体を持っており、人間たちを苦しめます。

そんなところに、人たちの中から魔族と率先して戦い、みんなを救うものが現れました。その中での中心人物を「勇者」といいます。彼は、とても強く、勇ましく。誰よりも優しかったのです。

しかし、卑怯な魔族になかなか勝てなかった勇者たちは、ドラゴンたちに助けを求めました。

「ドラゴン、どうかどうか僕たちに力を貸してくれまいか???皆苦しんでいる。」

「ふん、まあいいだろう。」

そうして、ドラゴンと力を合わせて、魔物の王たる魔王を倒して世界に平和をもたらしたとさ。


ふーん。そうとしか、感想が出ない物語だった。子供騙しの物語ともいえるが、ドラゴンがいるんだ。魔族だってどこかにいるのかもしれない。ただ、別にだからといってどう言ったことはない。子供だったのなら勇者にあこがれるのだろうか。残念だから、そういう年はとうに過ぎているな。強さにはあこがれるが。


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次章から、新展開に入ります。次回も読んでいただけるとありがたいです。評価もお願いします。











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