第10話コロシアムへの再帰
翌日、レイに遊びに誘われた。マーカスは市場に行きたかったらしい。
「で、今日はどこに行くんだ??」
「それは、ついてからのお楽しみです!!!」
そういって、ずんずんと先を行っていく。おいおい、迷わないだろうなあ。
「大丈夫!!!俺は3回ぐらい行ったことがあるところには迷わないから!!!!!」
つまり、初めて行くところはほぼ確実に迷うということだな。
おそらく、道は間違っていないのだろう。進むにつれて人はどんどん増えていく。相当な人気を誇っている娯楽のようだ。しかし、、ここら辺の景色を見たことがあるような気が、、、、
人生でここに再び来ることがあるとは思えなかった。ほんと、マーカスを誘わなくてよかったよ。壮大な装飾のを付けたどでかい円形の建物。その中にある血がしみ込んだ舞台。コロシアムである。
観客席は満員だった。紳士、少年、爺。様々な年代。これから怒るであろう殺人劇に、俺意外の全員が歓声を上げている。もちろん、レイも。別に、やっとのことでここから脱出した直後だというのに、自分の頭は妙に冷静だった。ただ、周りがもりあがっている中でも盛り上がれる気はしない。
「第一試合!!!!この男、いつになったら負けるのか全勝無敗のチャンピオン!!!ムーミン!!!!!」
そして、威風堂々とした男が入場してくる。まるで、前会った時とはくらべものにならない。まとっているオーラがまるで別人だ。
カランカランと鐘がなる。
「ムーミン、ほぼ一倍。ムーミンほぼ一倍。挑戦者にかける方は~」
コロシアムでの賭け事。もちろん、チャンピオン以外に賭ける酔狂な奴はいない。
「挑戦者は、、、ミリム!!!!!小柄ですばしっこい逃げ足が長所で。ハハハ。」
そこから現れたのは、小さくて細っぽい男だった。完全な当て馬だ。もう司会も笑っているし。観客席からは、もう嘲笑以外の感情が生まれていない。
「奴隷とはいえ、流石にかわいそうだな。」
そして、間違いない。彼は、ミリムは、、僕と、、、マーカスと。同じ年である。訓練の中に間違いなくいた。ああ、もうコロシアムに出ているのか。
「ミリムに賭けるぞ。俺は、、」
これが最後の餞別だ。
「本気ですかレオさん?そのお金、どぶに捨てるようなもんですよ。」
そして、運命の時はやってくる。
「始め!!!!」
この戦いはある意味すでに決着が決まっていた。つまるところ、チャンピオンの自爆。又は自滅。
戦いが始まった時、挑戦者はすぐにチャンピオンから距離をとった。別に、なんら考えることはなかっただろう。生存本能。ただ、其れだけである。チャンピオンからの攻撃を避ける、流す、逃げる。確かに、そういうのは得意だな。
観客席からはとんでもない量の質の罵声が飛んできている。
「早く倒せ!!」
「逃げんな挑戦者!!!」
そして、徐々に勢いがなくなっていくチャンピオン。
「薬、、薬、、なくなってきた。」
だんだんと、だんだんと、俺たちがあった夜の姿に近づていく。焦点の合わない眼とよだれを出した口。周りでざわめきだす観客たち。そして、、、彼は倒れた。
「え、、、」
「どうした?チャンピオン?」
もう。彼の体は。
「ふざけるな!!!お前に100万オンスかけたんだぞ!!!」
「何の面白みもない殺し合いやってどうすんだ!!!!」
「見損なったぞ!!!!!」
「殺せ!!!!!殺せ!!!!!殺せ!!!!!殺せ!!!!!!」
彼の最後の視界はミリムの細い指だった。この声援の中に、彼を応援する言葉が一つでもあったら彼は立ち上がることができたのだろうか。
観客がわきがっている中、賭け屋の賞金を取り上げもう帰ることにした。もう、ここにいるのは救いようがない者たちだけだ。だからといって、あの奴隷達がこいつらと比べてまともかというとそうではないが。
マーカスを見つけた。市場で食べ物をたくさん抱えて、幸せそうだった。
「その金、、、」
「ああ。この金だったらあげるよ。何を買ってもいい。」
間違いない。この感情を口に出してしまったらもう止まれない。何かと何かの境界線で、自分たちが踏みとどまっていた場所にはもう戻ることはできない。それでも、だが、しかし、けれども、だけど、口に出さずにはいられなかった。
「俺は、、、」
スラスラと出てくる頭の中のただの単語。それと、まるでここで踏みとどまっておけという風に、なかなか自分の思い通りに動かない口。それを全部無視して俺はマーカスに言いたいことを言った。
「お、おれは。レオは、奴隷の国をここに作るよ。」
瞬間、世界の彩度が変わった。いままでの薄暗い世界からの脱却と、美しい世界との出会い。その日、彼は皇帝となったのだ。
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