第9話熊

さて、マーカスとクマが戦ってから時間はもう30分ほどたっていた。戦況はまずくなってきている。というのも、レイがしびれを切らして突っ込んで熊に一発KO。それを無理にフォローしたマーカスが手痛い一発をもらってしまった。もちろん、俺もただぼーっと見ていたわけではない。(そうするつもりだったが、まずそうだったので。)

マーカスはもう倒れてしまいそうだ。早急に熊を倒さないと。

「ちょっと借りるぞ。」

レイが買ったパチモンの短剣を借りる。それに一細工加えて、戦線に戻ってきた。

「マーカス!!!ちょっとだけ、隙を作ってくれないか?」

彼には、もうそれに返事ををするだけの余裕はない。が、それでも彼を信じるしかないだろう。

「ほら!!!レオ!!!」

マーカスが最後の力を振り絞って、熊にアッパーをかました。足ががら空きになる。

「ナイス!!!!」

持っている短剣でその足をプスリとさす。

「があああああああああ。」

痛みで熊が絶叫する。

もちろん、こっちに凄まじい勢いで突撃してくる熊。

「ま、まずいぞレオ。あれは止められない。」

「効かなかったか、、、、、マーカス逃げろ!!!!」

一寸、、、マーカスとクマの距離である。そして、熊は目を向いて倒れた。


「コケコッコー。」

目を開いて中に入った太陽の光がまぶしい。もう朝なのか。確か昨夜は、、熊に会って、、倒したのか。それで力尽きて寝てしまったと。マーカスと、レイは大丈夫か。そんなにあいつらがやわだとは思えないが。

「うーん、」

ちょっとなっていた筋肉痛を我慢して立ち上がる。

「なんだ、元気じゃないか。」

二人とも幸せそうな寝顔で寝そべっていた。


「おはよー。」

先に起きたのは、マーカスだった。昨日戦った熊との傷がところどころに残っている。ただ、深そうな傷はおっていない。相変わらず、頼りになりすぎる男だ。

「なあ、昨日のナイフにはどんな細工があったんだ?さすがにナイフで死ぬほどあのクマは弱くない。」

ああ、それは。昨夜レイに貸してもらったナイフを取り出す。

「ここに、毒を塗ったんだよ。ほら、市場で蛇の毒だといってた変な奴がいるだろ?あいつから買っておいたんだ。」

正直、熊に効くかは博打だったけどな。あんなに効くとは思わなかった。

レイにこのナイフを返すときに、なんて言おうか。

「やっぱり!!!」

後ろの方から、ちょうどレイの声が聞こえてきた。

「これ、マクフサグマですよ!!!Àランク指定モンスター!!!!これを倒したとなったら、、、マーカスさん、、」

Àランク指定モンスター、、、またよくわからない称号が出てきたな。

「あ、ランク指定モンスターとは、国で指定されているモンスターのことです。きわめて、凶暴で一匹討伐するごとに賞金が出ます。例えば、この上のS、SSランクだと賞金が1000万オンスになることもあります。今回は、Àランクなので10万オンスほどですが、、、、、」

10万オンス!!!!!とんでもない臨時報酬に胸が高鳴る。マーカスも、よだれを垂れ流している。おそらく、おいしい食べ物を妄想していたのだろう。


さて、こういう時に熊を持って行くのは大体冒険者ギルドである。そして、もちろん予想されるのが

「お前らがこんなのを討伐できるわけねえだろ!!!!」

「どうやったんだ!!!!!!」

「ぶち殺されてえのか!!!!!」

「賞金よこせ!!!!!!!!」

「ずるいぞ!!!!!!!!」

こういう絡みである。最後の3つとか、もはやなんなん。

マーカスは受け流しているが、レイは真っ赤になっている。

「坊主ども、どうやったんだ?こいつには目立った傷がねえぞ。」

強面の受付の人に言われる。

「この短剣に塗った毒で倒しました。」

「ええ!!!!俺の短剣に何毒塗ってんの??????」

そういえば。レイに言うタイミングがなくてつたえられなかった。

足の傷を指さす。

「毒か、、、なるほど大きい奴が足止めして、、、というわけか。不可能じゃアないが、、、まあこういうのは持ってきたものへの報酬だから」

納得してくれたようだ。

「ちょっと待ってろ。」

帰ってきたとき、片手には限界までパンパンになった金貨袋を抱えていた。


さて、今回10万オンスを手に入れたわけだが大雑把に山分けされた報酬は個人の用途oに、使われる。マーカスは飯に、レイは装備に使うのだろう。そして、自分の使い方について、、、、今思い浮かんでいるのはとってももったいない方法である。しかし、今後のことを考えると最適になりえるかもしれない。やるか、、、、、、、

「冒険者の皆さん、俺のおごりで飲みませんか。お金余ってますんで。」

さあ、どう出るか。

「お、おい。」

「え、、、、、」

「いいのか????」

一瞬の静寂のあと、驚きの声。

「いいですよ。」

「じゃ、じゃあ。」

静かな宴が始まった。


考えていた通り、冒険者は仲良くなってみるといい人が多かった。ただ、それよりも特筆すべきは彼らの経歴の多彩さである。元商人、憲兵、中央憲兵、親衛隊、そして、、ここにもかけないもの。様々である。それぞれ、自分たちの事情があり冒険者となった。



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