第8話お金と物と
人生で初めて経験したお金をもっている、ということは素晴らしいことだった。あの人はお金持ってそうだなとか、あいつは俺と同じで貧乏だとか飯をどうしようかなどと考えなくていいのである。今悪人でも許せるよう許せるような心理的な余裕が生まれているのがわかった。
魚と交換してもらい、初めてもらったお金は別に光っているとかそういうわけではなかった。ただの円型でさびた鉄のようにしか見えない。オンス、というのがこの世界でのお金の単位らしい。
「こんなのと飯が交換できんのかあ~。不思議だなあ。」
マーカスは汚いものでも触るかのように、指でつまみ上げる。
「これで宿にも泊まれるのか?」
「ぶっ」
レイはその発言で飲んでいた物を吐き出す。
「できるわけないじゃないですか!!!たった5000オンスですよ?一人ならともかく、三人で泊るのは絶対無理です。」
泊れると思っていた、、、、
「マーカスとレオはこの世界の常識を微妙に知らないですよね?今までよくこの世界で生きていけましたね。」
まあ違う世界で生きてきたからな。
「だとしたら、俺たちはどこで泊ればいいんだ?」
「冒険者なら馬小屋とか、そういうところが当たり前ですね。」
「じゃあ、俺たちは森でいいな。」
「ハハハハハ。え、冗談ですよね?」
冗談ではないが?
「森でも十分寝れるぞ。別に寒くないし。」
「そ、そうなんですか。じゃあ今夜は。」
おそらく、町の中心地であり最も多くの人が行きかう場所。そう、食べ物市場である。香ばしい匂いに連れられてやってきた俺たちは、食べ物を歩いて回っていた。
「結構遠かったのに、匂いだけでたどり着くんですか、、、」
元奴隷の食べ物への執念を舐めるなよ。
「コロッケ、コロッケですよ~。」
「ジャガイモとお肉を混ぜたものか。バランスは良さそうだな。」
コロッケを5個買うマーカス。
「みかん~みかん~。」
匂いを嗅いで、10個ぐらい買うマーカス。
「新鮮な焼き魚~。新鮮な焼き魚~。」
「匂いてから捕ってから五日以上な気がするが、それを新鮮というのか?」
これは魚屋を(多分無意識に)煽るマーカス。
「レオはお金使わないんですね。」
マーカスが使いすぎなんだよ。確かに、何も買わないのは使わなすぎかもしれないが。
「レイも買ってないじゃないか。」
「実は、買いたいものがあるんですよね。」
そういって、少し先の武具屋?と書いてあるところに進んでいった。そこにあったのおは武器・武器・武器。
「かっこいい!!!」
レイはこういうのが好きなんだな。俺も好きだぞ。一つ、懸念点があるとするなら到底5000オンスでは買えないものばかりだということだけだが。
レイは残念そうに、帰っていく。
レイが(おそらく、という絶対パチモンである)店で買ってきたへにゃへにゃの剣を大事そうに手に抱えて、マーカスは5000オンス全部を使い切って勝った食べ物を持ち切れず、途中でぼりぼり食べながら俺たちは市場の先へ先へと進んでいった。
奥に進むにつて、どんどんと怪しいものが増えていく。ドラゴンのしっぽ。(巨躯として知られているドラゴンのしっぽがと人の指ぐらいのサイズなわけがないだろう。)魔法の本。(ノーコメント。あったら素敵だと思うし、この国の中心には使える人物がいるという都市伝説もあるが、、、)レールガン?(金属の塊みたいなやつ。電磁波?だとかわけが分からなかった。)蛇の毒。(一番まともかもしれない。)
森に帰ってきた?となるのだろうか。それまでに、マーカスはもう、食べ物を食べきっている。
「マーカス、、お前大食いだったのか。」
「まだ全然食べれるなあ。」
といって、食べ物を探しに行った。
「ちょっと、起きて!!!まずいですよ!!!!」
絶賛爆睡中、レイの声にたたき起こされた。
「どうした?」
寝ぼけ目をこすりながら、夜の空間を見つめる。レイは目の下のクマが大変なことになっている。
「寝れないのか?じゃあ、木の上でも、、」
「そうじゃないですよ!!!!いや、そうでもあったんですけど、、、熊です!!!!熊が出ました!!!!!!!!!」
そして、暗闇の先を指さす。暗闇の先に目を凝らす。
「あー!!!!熊だあああ。」
確かに、そこには大柄な体のクマのシルエットが、、、
えーと、確か熊に会ったときは、急に後ろを向かずに前を向いたままだんだんと後退していくだっけ。ギルドに、注意が書かれていたな。震えながら、前を向く。
「レイ、いいか。落ち着いて聞けよ。」
「熊から後ろに目をそらしちゃだめだ。ずっと、前を見ながらゆっくりと後退するんだ。」
ふたりで、暗闇の中の熊をにらみつける。
「がああああああ」
その瞬間、突然暗闇に、もう一人のクマが現れた。その熊はかなり小柄だった。大柄な熊と小柄な熊が激しく争っている。
「レオ、チャンスだ!!!早く逃げちゃおう。」
「ちょっと待て!!!」
小柄な熊に違和感を感じる。大柄な熊は荒っぽいまさに野生といった戦い方をしていたが、小柄な熊はまるで人間のような、、格闘技のような、、まるでマーカスみたいだな、、
「小柄な熊はマーカスだ!!!!!」
「ええ!!!!!」
暗闇の中で、少し近づくとマーカスがいることが分かった。
そして、マーカス。大柄な熊相手に全く遅れをとっていない。
「加勢しないんですか?????」
「だめだ。足でまといになるだけだ。」
それにほら、もう倒しそうだぞ。
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