第7話冒険者

街でみすぼらしい姿をしていながら男前で大柄な男と、純朴そうな顔をしていて身なりもきちんとしている少年とその他一名の三人組は当然とても目立つこととなった。噂話にならないはずがない。それでも、二人は全く気にするそぶりもなかった。

「ここが、始まりの町アランスタかー!!!!!」

少年はこの町にたどり着いたことがとてもうれしそうだ。視線がせわしなく前後左右に動いている。

「あ、すみません。はしゃいでしまいました。服を買いに行きましょうか。」


これで、俺とマーカスはまともな洋服を手に入れたわけだが。さすがに、店の中では一番安いものを選んだ。

「で、では。ありがとうございました!!!」

ここで、少年とは別れることとなった。純朴そうな少年だったなあ。もう会えないだろうが、悪い人に騙されてないといいけど。


その心配は違う意味で裏切られた。

「すいません。冒険者ギルドって、どこにあるか、、、」

「「「あ。」」」 

街で悪人を見つけようとしているときだった。


「す、すいません。方向音痴で。」

確かに、町の中から建物を見つけられないのは相当なものかもしれない。

「ここ、何ですが。」

少年から図形と名前が書かれた紙を渡される。どうやら、現実の場所と対応しているらしい。

「だったら、ここが紙の上でのここだから、、」

地図が真反対になっている気がする。

「あっちの方向じゃない?」

「ありがとうございます!!!」

そして、まったく見当違いの方向に走り出す。

「ちょ、ちょっと待て。」

し、心配だ。

とりあえず、連れていくことにした。


剣と盾のマークの建物。ここが、少年の言っていた冒険ギルドらしかった。しかし、外からでもわかる酒の匂い。出入りしている人物のガラの悪さ。そして、町の人々から向けられている嫌悪の視線。彼にふさわしい場所ではない。

「ほんとに、あそこ?名前間違えない????」

「いえ、あそこですが。」

彼の口調に少しとげとげしさがあるので、これ以上は突っ込まないでおく。

それよりも彼についていくべきだろうか。正直、服の義理はまだ返し切れていないだろう。

「マーカス、一緒に入るか?」

「それぐらいはしていいかもな。」

マーカスは入るつもりのようだ。

少年は、大きく息を吐いて扉を開ける。


中はとても酒臭かった。こんな昼間っから酒飲んるやつが多いとこは大体まともなところがない気はするが。もちろん、入ったとたんに俺たちは目を引いた。ここもコロシアムと負けず劣らずの環境なのかもしれない。奴隷でもないのに。

多分、マーカスがいなかったら即絡まれてたんだろうな。

「ぼ、冒険者登録をしに来たのですが。」

少年が強面の受付にこわばった表情で言った。

「おう、坊主。何歳だ?」

「18です!!!」

18カーといった表情で少年を見ている。そして、後ろの俺たちに気づいたようだ。

「君たちは??」

「「18です。」」

今度は、驚いた表情で俺たちを見ていた。

「そんなに大人びた18歳がいるかよ、、まあ、いいや。」

「君たち知り合い?だったらパーティーを組まないかい?さすがにこの年の

坊主に一人で冒険者をやらせるわけには行けないからね。」

この強面の男、心配しているし意外と優しいのかもしれない。

「パーティーってのは、数人で組むチームみたいなものです。別に組んでいただかなくても構いませんよ。」

小声で少年が耳打ちをしてくれるが、、おそらく俺たちに入ってほしいのだろう、最後のほうは小声だった。だが、、

「そもそも冒険者ってのどういうことをするんだ?」

これを知らない。

「モンスターを狩ったり、その他もろもろですね。暗殺などをすることもあります。そうやって、生計を立てています。」

確かに、18歳の坊主がする仕事じゃあねえな。

「別に、いいぞ。ぱーてぃーを組んでも。どうせすることもないし。」

マーカスもいいというだろう。

「じゃあ、決まりだな坊主ども。今からお前たちはパーティーだ。一緒に依頼を受けてもらうぞ。」


というわけで、最初の依頼として渡されたのは池の魚を取ってくること、か。

「依頼をギルドという組織に通して、冒険者に依頼するシステムとなってるのか。なるほど。」

それだと、冒険者に直接話さずに済んで相手にも都合がいいかもな。あの人たちに直接というのは荷が重いだろう。

「池の魚を取るだけでいいのか、、簡単だな。」

「簡単なのをよこしてくれたんだろう。」

そして、3人でズボンをめくって池にずぶずぶと入る。少年は汚い池に入るのに拒否感があるみたいだったが、ゆっくりと入っていった。

「そういえば、名前は?」

「レイと呼んでくれ。」

「レイ、そこら辺の石を動かせるか?」

「ああ。」

返事は極めて冷静だったが手は正直だった。伸ばしてはひっこめ、伸ばしてはひっこめを繰り返している。

「俺がやろうか?」

マーカスが手を伸ばす。

「いや、いい。」

レオが息をすっと吐いて石を動かす。ガサガサっとおとがした。石から虫が飛び込んでくる。

「ひやあああああああああああああああああああああああああ。」


結局俺とマーカスだけで依頼は完了させた。

「虫がだめなら、先に行ってくれればいいのに。」

「す、すいません。恥ずかしかったもので。」

こうやって僕たちはお金問題を克服したのだった。





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