第二章奴隷と世界編

第6話世界の構造

コロシアムの脱走の場面は面白かっただろうか。面白くなくても、どうかご容赦いただきたい。ここで出会ったコナーとハンクとは、ずっと先でまた出会うこととなる。アイツらとは今も良い友人である。ここからは、脱走後に衝撃を受けた世界について話していこうと思う。そして、わが最大の宿敵レイについても、、、、



「ああー、よく寝たなあ。」

周りを見回す。眼に入ってくるのは緑の木々と、色鮮やかな果実。よかった、昨日の出来事は俺の妄想ではなさそうだ。

「起きたか、レオ。」

マーカスはどうやら俺より先に起きていたらしい。昨夜はひどい顔をしていたが、今は憑き物が落ちたかのようにすっきりとしている。元気そうで何よりだ。

自分の置かれている状況を理解したところで、お腹が減ってきた。そういえば、あの草を食べてすぐに寝てしまったのであの草以外ほとんど何も食べていない。

「お腹減ってるなら、俺が見つけたおいしい果物いるか?。」

もらおうか。

マーカスが僕に投げてよこしたそれは真っ赤な果実だった。少し独特な色をしていながら、甘酸っぱいにおいがしている。

「うまいな。」

「そうだろ?」

少なくともコロシアムの中よりはずっと。


「さて、腹ごしらえも済んだしこれからのことを考えようか。」

「これから?どうやって生きていくかってことか。」

そう。その通り。

「背中の鞭あとで俺たちが奴隷であったということはよくわかる。だから、背中の傷は誰にも見せちゃだめだ。だけど、服がもう限界だから服を買わなくてはいけない。」

「それには、お金が必要だね。」

イエス。だから、俺たちはどうにかしてお金を稼がなくてはいけない。それが第一目標だ。

「お金、お金か。悪い人から、レオが盗んでくればいいんじゃない?」

これをかなり無邪気な顔でマーカスは言っている。俺がマーカスを染めてしまったのか、、、

いや、悪くないな。悪事をして設けた金だろうから別に心も痛まないし。


というわけで、町に戻ってきたが、、、俺たちは気づいたことがある。俺たちは猛烈に目立っているということである。じっと見つめられることはないが、ちらちら見るような視線つまり一瞬だけ見てすぐに外すといった視線をずっと受けている。

「お、おれたちなんか注目されてないか?」

お前は気づくのが遅い。

「これじゃ、物は取れないな。森に帰るぞ。」


よくよく考えれば目立つのは当たり前か。こんなに粗末な洋服では。でも、お金がないと洋服は買えないし。洋服がなければお金は盗めないし。

「堂々巡りだな。お金を稼ぐ違う方法ないかな。」

「な、なあ。もしかしたら、俺たちが目立っていた原因、洋服の他に、匂いのせいでもあるんじゃないのか?」

「匂いか。気にしたことなかったな。」

自分の体のにおいをかいでみる。確かに、汗臭いかもしれない。

普通の人はしゃわー?を浴びるってだれか言ってたしな。水でも入ればいいのだろうか。

森の中で見つけた池の中にずぶずぶと入っていく。水が汚いから逆効果だと思うのだが、、、

「気持ちよくはあるな。」


水から上がった後に自分の体を匂ってみる。確かに、臭くないかもしれない。マーカスにもかいでもらったが彼もくさいないといっていた。

しかし、、マーカスは風呂に入る前と後では印象が全く違って見える。入る前は、べたついた髪が目を隠して恐怖を与えかねない容姿だったのに、入った後は大きい目がはっきりと見え男前な印象さえ与える。これはまた、違う意味で目立ちそうだな。


その時だった。おそらく自分と同年代であろう少年がそこに現れたのは。脊髄反射で背中の傷を手で隠そうとするが、少年は真正面にいる。見えないだろう。

「なにしてるんですか?」

怪訝な顔で少年は僕たちに尋ねた。

「ちょっと水浴びを、、、」

「その汚い池でですか?」

「あははははは。」

愛想笑いでどうにか乗り切れないか。

少年はまあ、いいやという風にため息を吐いた。

「実は自分は町に来たのですが、迷ってしまって。街がどこにあるか知りませんか?」

ここは、知っているというべきだろうか。別に彼の案内をしない理由はないのだが、自分たちのおかげで彼が悪目立ちをしてしまうのはかわいそうだ。とりあえず、考えている間に服を着る。

「失礼かもしれまんが、なぜそんな奴隷のような服装なのですか?」

服装にもかなり怪しまれた。又愛想笑い、、ではさすがに説明がつかないか。しょうがない。ここは一芝居打つか。

「じ、実は俺たち強盗に襲われてしまって身ぐるみをはがされてしまって、、、」

マーカス。うそをついたからって、すごく申し訳なさそうな顔をしなくてもいいんだぞ。「強盗」という存在が、この世界にいることは牢の中で確認済みだ。なんと、人の財産、服など高価なものを盗んで逃げてしまうらしい。そこまでマイナーな存在ではなかったらしいが果たして。

「あ、そうだったのですか。辛いことを離させてしまって申し訳ないです。」

少年はこの話を信じてくれたらしい。正直、心が痛むね。

「では、町を案内していただいたお礼に服をこちらが用意するというのはどうですか?このまま探しても町が見つかる気がしないですし。」

彼が聖人に見え始めた。

「さ、流石にそこまでは、、、」

人がいいことを言い始めたマーカスの足を踏んで黙らせる。

「とりあえず、もらっといていいんじゃないか?服がないとお金をかせぐこともできないだろう?別にお金を返さないわけではないん。お金を稼げたら返していいんだじ。」

これをすべて、笑顔でかつ無邪気な少年にぎりぎり聞こえないぐらいの音量で言う。こういうのが、マーカスを悪の道に引き込んでるんだなあと思いました。

「じゃ、じゃあ。」

マーカスは町の方向へと歩き出した。


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