第5話脱出②
「牢の外って、こんな感じだったんだ。」
「まだ、脱出できてないからな。そんな終わったみたいな感じ出すなよ。」
といっても、俺も感動しているが。他の2人も、同じように外の光景に見入ってい
る。
奴隷達の牢獄といえども見張りの憲兵はいるものでまあ、そんなに簡単にいくはずがないと思うわけですが。とりあえず、巨人のように大きいマーカスとハンクの体を隠すのに苦労した。
「ちょっとトラブルがあったが怖いぐらいに順調だな。」
今も見つからずにだんだん外に近づいているし。
「そういうことは言わない方がいい。不吉なことが起こる印として、「フラグ」というからな。」
「くらぐ?」
「フ・ラ・グ!」
「ふらぐ、か。」
気を付けておこう。
さて、フラグというものを言ってしまったからか知らないがピンチである。さすがにあそこでの情報収集にも限界があるか。まさか脱走者の前にはチャンピオンが立ちはだかるとは。
「俺たちの前に立ちはだかる理由がないと思うんだが?」
「ふふ、脱走者を防いだら薬がもらえるからな、すまないが俺の前につかまってくれよ。」
「薬?」
俺たちのことなんぞ上の空のようで焦点のあってない眼とよだれを垂らした口。それが、ここのチャンピオンだった。まるで狂人のようである。
「前見たのと全然違うな。弱そうだ。」
自然と、背の大きいマーカスとハンクが前に出る。
「おれたちの邪魔をするということは、この四人を同時に相手することになりますが????」
凄く強気なハンク。いや、こいつの性格がマジでつかめない。
「ふん、チャンピオンに勝てるとでも思っているのか?」
正直、その目で言われても負ける気はしない。
始まりは唐突だった。チャンピオンがハンクに素早く殴りかかる。ハンクのよこっぱらにあたったパンチは鈍くて大きい音をたてた。ハンクは、そこを抑えて苦しそうにしている。あんなの当たったら、俺とコナーは一撃だな。その間に、マーカスは殴り掛かる。それはチャンピオンの頭の側部にクリーンヒットする。が、まったくダメージになっている気はしない。
しかし、チャンピオンは全く見当違いの方向にパンチを繰り出す。
「手ごたえが、、っちこの役立たずの目ン玉が!!」
?幻覚でも見えているのだろうか。
「そっちじゃねえよ!!!」
コナーは、彼の軽そうな手で目をつぶそうとする。小さいものの戦い方をよくわかってるな。だが、遅い。彼は、すぐにチャンピオンにけられて沈んだ。
残って、戦えそうなのは俺とマーカスだけだ。
そして、チャンピオンはほとんど無傷である。ゆっくりとマーカスと後退していく。
小声で、マーカスにつぶやいた。
「チャンピオン、もしかしたら目が見えてないかもしれない。その証拠に俺たちを追ってきてないし、声をほとんど出さなかった俺は殴られてない。」
「なるほど、でもこの二人を連れてあれを突破するのは無理だな。」
二人とも倒れちゃってるしな。
「あ!!!そういえば、一回レオが憲兵の声真似をできたことがあっただろう?あれはできないのか?」
あれは意図してできたわけじゃないんだよなあ。やってみるだけの価値はあるか。
「あ、ああ。」
声の調子を整えて。
「ムーミン!貴様何をやっているのだ!その奴隷は特別だ!!!通らせろ!!!!」
また、自分の声でない声が出た。ただ、それと同時に猛烈な頭痛が襲う。頭が割れるように痛い。
「し、しかし!薬が!」
「特別だ!」
呆然としているチャンピオンの横でマーカスがハンクとコナーを持ちながら通っていく。
「だ、大丈夫か?」
「う、うう。」
そのあとのことは、いまいち覚えていない。そのあともいろいろあったらしいが、頭痛がひどかったのだろう。気づいたら、俺たちは外だった。
「外だ!!!!」
「朝日だよ、、」
太陽を直接見るのは初めてだった。大きい炎としか言いようがなかったが、言いようがなく感動した。
「じゃあ、解散だな。」
すこしみんな悲しそうな顔をしている。
「みんな元気でな。」
「うん。」
「また。」
さて、ここからどこに行こうか。住む場所とごはんを探さなくてはいけないな。早いとこ探さないと。
「で?なんでついてきてんだマーカス?」
「どうせ行く当てがないなら、一緒にいてもいいだろ?」
別にいいか。
「ただ、本当にいく当てがないからな。早速飢え死にするかもしれない。」
「餓えるなら、二人でも、一人一人でも一緒だよ。」
とりあえず町に出てみた。この粗末な格好は、人の目を引く。気にしなければいい話だが。
「どうやら、お金、というものを持っていなければ食べ物も止めるところももらえないみたいだ。」
マーカスは人を泊らせるところにいって(宿屋というらしい)、門前払いを受けたようだ。
「お金」か、そんなのがあるなんて知らなかったぞ。
「お金は、どうやったらもらえるんだろうか。」
「うーん。わからないな。」
「とりあえず、食べるものを探そうか。どこかの草とか。」
やってきたのは、町のはずれの森である。
「この草は食べれるんじゃないか?」
マーカスが毒々しい色の草を持ち出す。
「それは、、、コロシアムで食ったことがあるな。確か食えたはずだ。」
二人で、その草を食う。
「味はまあまあだな。こんなもんだろう。」
「初めての食事にしては豪華なんじゃないか?」
意外とおいしかったです。
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