第4話脱出


「いいか?ここから先に進んだらもう後戻りはできないぞ。」

二人の顔をじっと見返したが、二人とも決心はついたらしい。

この二人が、俺たちの誘いにノータイムで乗ってきたのは驚きだった。小さい方のやつ(コナーというらしい)は、ここにいても未来はない。大きい方(こっちはハンク)は、外の世界を見てみたいという理由だったか。二人とも、いつか脱走しようとは考えていたらしい。


「じゃあ、この計画について最後に確認しておくぞ。基本として、この計画は憲兵に見つかって、戦うことを考慮していない。仲間を呼ばれたら一瞬で詰むからな。そして、外に出たら後は自己責任だ。そこからは考えてない。」

「ここの地理は把握してるよな?まず、俺たち奴隷の子供と奴隷がいるこのフロア。出るには、扉を開けないといけないがそれには憲兵の持つ鍵がいる。中で見張っている4人が持っているはずだ。そして、このフロアを抜けたら凶暴な奴隷たちが個人の独房で閉じ込められている牢獄。憲兵に気を付けるだけでいい。中にいる奴隷たちの言葉には耳を貸すなよ。そこを出てかいだんを昇ったらもう外だ。な、簡単だろ?」

「まず、憲兵の誰かから俺たちのいるところから、外に出るための鍵をとってくるんだよね。」

「そう、それが一番の難関だ。だが、それも解決法を用意してある。大丈夫だ。」

あとは、奴隷たちの牢獄を通り抜けるだけだからな。


ここでも作戦があるんだ。コナーはそういったレオの言葉を思い出していた。

作戦 どうにか注意を引いて、その間にレオが鍵をする。

お粗末な作戦だがどうやら、レオにはスリの才能があるらしい。自分に試してもらったら、見事にすられ気づかなかった。俺たちは何をすればいいのか聞いたら失敗した時の口封じらしい。結局、力に頼るんですね。


マーカスが憲兵に近づいていく。

「どうした?また鞭でたたかれたいのか???」

やばい、今こいつを無性にに殴りたい。その横から、レオがにゅっと、飛び出してくる。

「おっと、ごめんなさい。」

マーカスが引いていく。レオの手には、財布がしっかりと握りしめられていた。


財布?なぜ財布なのだろうか?

「さ、財布。なんで?中に鍵があるの?」

「、、、なかった。あいつは鍵を持ってなかったんだよ。」

レオはうなだれて言っている。

「確かに、あいつらは一人一人が鍵を持っている必要はない。誰か一人が持っていればいい。中に入れる。」

「じゃ、じゃあどうするんだ。スリをしたこともいずればれて、、、」

「さ、財布がない!!!!」

まずいことになった。


ここで、想定より早く計画を決行しようとしたデメリットが出てくるとは。正直、集中力を欠いていた今この時でなかったらもっと調べられたのに。とりあえず、自分のミスは自分で挽回しなければいけない。憲兵に向かって、とびかかる。

「お、おい!!!こんなことをしにゃちゃぢょうにゃりゅきゃわかっちゃるのか?(こんなことをしてどうなるのかわかっているのか)?」

口を手でふさぐ。死ぬ気で振り落とされないようにやっているが、これはあと30秒持つか持たないかぐらいだろう。その間に次の策を考えなくてはいけな・・

「う!!」

ハンクが俺がくちをふさいでいる間に腹にパンチを食らわせた。当分、起きないだろう。こいつ、天然なのかと思っていたら意外とやる。


失敗についての軽い謝罪を済ましたあと鍵を持っているであろう憲兵の品定めを始めた。あいつは、、、、

「違うな。下っ端だ。」

口が治ったのであろうマーカスが言う。まあ、雰囲気でわかるな。

アイツでもない。あれでもないだろう。

そうしているうちに、明らかに役職が上であろう奴を見つけた。今までのやつより、装飾が凝っている。

「あれだな。」

「ああ。行ってくる。」

マーカスがまた、真ん前で立つ。

「おい!!!俺様の眼の前に立つな!!!!」

不機嫌そうだ。はげるぞ。そこに、さっきの(俺が財布をすった)憲兵が起き上がったあと、走ってきた。まずい。控えめに言ってこの状況は詰みすぎている。

「報告します!!!私は奴隷の誰かに財布をすられました!鍵を狙っている可能性があります!!!お気を付けください!!」

思いっきり敬礼をする。

もう、なりふり構てられないな。ばれるのは気にせず、思いっきり当たって鍵をとる。

「コナー・ハンク・マーカス、プランBだ!!!!扉に向かって、思いっきり走れ!!!!」

憲兵はその声を聞いて、一瞬体が硬直していた。が、すぐに俺たちをとらえようと動き出す。俺は、それよりも前に走り出しドアを開けていた。

最初に来たのは、コナーだった。次に来たのはハンクである。

マーカスは、やはり傷が痛んでそうであまり速く走れていない。憲兵に追いつかれそうだ。

「マーカス!がんばれ!」

あと五メートル、四メートル、三メートル、二メートル、ゴールにたどり着く、それよりも早く憲兵はマーカスの足に追いついた。

「手を伸ばせ!!」

手を三人で全力で引っ張り上げる。マーカスの体は、ドアを通り過ぎた。憲兵の体ごと、ドアを閉める。

「いった!!!!!!」

そこで、脊髄反射よりひっこめられた瞬間を見逃さず、鍵を閉める。

「早くここを開けろ!!!!!!!!奴隷ども!!!!」

訓練の間は怖かったギラギラした目がこの扉越しではそんなに怖くはない。

「「開けてください、奴隷様だろ??」」

コナーとは気が合いそうだ。







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