第2話戦闘訓練という名の

「戦闘訓練を始める!!」

禿げ頭の教官からその声がかかったのは「あの」光景を見た一カ月後だった。

「次に18歳になるもの、ここに並べ!!」

ぴしっとした隊列が組まれる。おそらく、100人ぐらいいるだろうか。この中で一年後に生き残っているのはほとんどいないと思うが。

「これから、お前らを客の前で情けない試合をしないように鍛えてやる!!ついてこい!」

教官はそう言った。

「はい!!!!」


連れてこられた部屋は、血の匂いがしみ込んでいる鉄臭い小さな部屋だった。ここには、一体何人の血がにじんでいるのだろうか。この部屋にいるだけで吐いてしまいそうだ。

「では、手始めとしてスクワットと腕立て200回ずつ!!!」

「いっち!にーっい!さーん!よーーん!ごー!・・・・・ごじゅういーち!ごじゅうにーい!!」

周りはみんなもう慟哭を挙げている。いや、何もせず50回もしたのだから素晴らしいだろう。だが、、、

「ごじゅうよー、、うあああああ!!!!!!!」

最初の脱落者が・・でた。そしてまるで、ハイエナのようなしぐさで教官たちは寄ってくる。

「なに休んでんだぶちのめされてえのか!!!」

「この程度もできないなんて、ゴミ屑以下だな!!!お前ら!!むち打ちだ!!!」

怒りながら、しかし声はとてもうれしそうであった。そして、宝物のように血がべっとりついている鞭を取り出す。

空気の乾いた音が、体から響く。

皮膚から血が容赦なく飛び出し、おそらく一生ものである傷が体に刻まれる。

「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい、、・・うっうう」

「お前ら、何見てんだ!スクワット再開しろ!!!!!」

「ごじゅうご!!ごじゅうろく!!!ごじゅうなな!!・・・」

この地獄のような光景の中で、時間は永遠のように感じられた。そして、、

「にひゃく!!!」

周りに残っているのは、俺たちを含めて20人だった。


「今日の訓練はこれで終わり!!!明日もあるから用意を怠らないように!!!」

「はい!!!!」


「ふー。緊張したあ。」

「はー。」

膝から崩れ落ちる。

「しかし、本当に情報収集をしておいてよかった。この訓練のことを聞いたときは、眉唾だと思ったんだけどな。」

「本当だよ。嘘だったらよかったのに。」

俺たちは、「あの」光景を見た後、ここで生き残るためにすぐに情報収集を開始した。なかなか、俺たちとここでのことを話したがる人はいなかったがどうにか手に入れた食べ物を渡したら、すぐに打ち解けることができた。そこで手に入れた情報の中に、この情報が入っていたのだ。

「明日もこれがあると憂鬱だけどな。」

「はは。」


「さて、二日目だ!!!今日からは昨日みたいなぬるま湯とは違うぞ!!!!」

「はい!!!」

「腕立てスクワットからだ!はじめろ!!!」

「はい!!」

「にひゅくう!!!」

ほ、っと誰かが息を吐く音が聞こえた。いや、聞いていた地獄はこれからだぞ。

「次は組手を行う!!かかってこい!!!」

「はい!!」

「一番先のものから早く!」

にやにやしながら上官は何かの武道の構えをとった。たいして、何も知らない哀れな一番最初の子は、こぶしを胸の前で握っているだけだ。

「ああーーーーーーー!」

何も知らずにただ突進していく。ばーん!!勝負は一瞬で着いた。

「情けない!!そこに立っていろ!!!」

そして、鞭を取り出す。明らかに、武道の心得がある憲兵に何も知らない者たちが勝てるはずがない。ようは、ただ痛めつけたいだけなのだ。投げられたものの悲鳴が響き渡る。

「次!!!」

嬉々として、それは続けられる。圧倒的な力の差に、皆打ちのめされていた。


マーカスの番がやってきた。「わかっているよな」という目で目くばせを一応しておく。

「次はお前か!!」

マーカスの体格は憲兵をはるかに上回っている。だが、、

不安は的中することとなる。上官の組み手に、マーカスは動じなかった。そして、、、上官を見事に殴り飛ばす。

「ぐへっ!!!!」

周りの人間は、あっけにとられていた。沈黙が止まった後、、彼に待っていたのはリンチだった。

「憲兵を投げ飛ばすとは何事か!!!!!」

「奴隷のくせに!!!!!!!!!」

「ぶちのめしてやる!!!!!」

そこにいた憲兵全員が参加したそれを彼は声一つ上げず、ただ耐え続けていた。何もできないのがもどかしい。彼はもう死んでしまうぞ。胸を突き刺すような痛みと大量の汗が噴き出してくる。ああ、そうだマーカスなら事前の情報で知っていてもやるんじゃないかと思っていた。彼は真っ直ぐすぎる。気づいたら、もう声を出していた。

「おい、流石に死んでしまうんじゃないのか?ほかの訓練もあるしやめた方がいいだろう。」

この声を出して驚いたのは、自分自身だった。今の声はなんだ?俺の声ではない。憲兵の中の一人か?なんでこの内容なんだ??そして、凄まじい頭痛がなぜか自分を襲ってきていた。頭が割れるようにいたい。なんだ、急になんで。

「あ、そうだな。さすがにこれで勘弁しといてやるか。」

「死なせるのは、いろいろとまずいからな。」


「お前!次はないからな!」

「はい!!」

「今日は終了とする!」

「はい!!!」

「はー。」

上官が出ていったのを確認して深いため息をついた。

「お前、何であんな無茶するんだよ、危うく本当に殺されるところだったじゃないか。」

「ごめん、ついかっとなっちゃって。」

ルーカスは、傷だらけの顔で苦笑いをする。そんな笑えるようなことじゃないだろう。

「そういえば、あの声。もしかして、レオが出したのか??」

「たぶん、だけどなんでわかったんだ?俺の声じゃなかっただろう。」

「勘。」



そして、会話がひと段落した後、周りのやつらがこっちにやってきた。

「?」

「お前!憲兵殴るなんて度胸あるなあ!!!」

「スカッとしたぜ!!!!」

「大丈夫か、けが。」

みんながマーカスに駆け寄っていく。おれは、その波に押し出されるようにして外に出た。

「人望の塊だな。」


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