グラディエーターズ

絶対に怯ませたいトゲキッス

第一章コロシアムと奴隷編

第1話レオ 奴隷の王の誕生

西暦前700年  マルティネス皇国レオ・マルティネス王自伝 

これは、俺が王に上り詰めるまでの物語である。ここにあるのは俺の人生の一部に過ぎない。俺は王としてこれからも生き続けるだろう。しかし、俺の人生はコロシアムで始まったのだ。わが人生の起源であり原点がここに詰まっていると言えるだろう。


俺が生まれたときから、自分の居場所は決まっていた。薄暗い明りに、ゴミのようなにおい。地面に落ちた食べ物を食べるのは当たり前。ここ、コロッセオの地下は俺のような孤児たちで溢れかえっている。みな、着ているものはごみのような布きれ一枚だ。

「あ、あのガキ俺の飯を取りやがった!!許せねえ、、、待ちやがれ!!!」

「誰が待つもんか!あ、これおいふい(おいしい)な。」

「なにじろじろ見てやがんだ、この野郎!俺の足がねえからって、そんなにおかしいか!」

「なんだお前?生意気だな?コッチこい!ぶちのめしてやる!」

だからまあ、こんなことは日常茶飯事、こういうのは大抵取ったもん勝ちだったりする。人っ子一人気にもとめていない。ここは、まさに屑の巣窟とよんで差し支えないだろう。俺の知り合いでも性格がいい奴は一人ぐらいだ。

「レオ!」

「おー、マーカス。」

その「一人」が早速やってきた。といっても、彼の容姿から彼の良さは想像すらできないだろう。筋骨隆々と言った体つきに、タカのような目と縦に大きく傷の入った顔。もし初対面、いや彼の性格を知っていなければ何回目だとしても蛇ににらまれたカエルのように縮み上がってしまうに違いない。

「どうした?ドアの角に小指でもぶつけたのか?」

「そんなんじゃないさ。実は、ここにすごくおいしいパンが2つあってね。」

その通り、彼が手のひらを開くと真新しいベーグル二つ彼の大きな手のひらの上に載っていた。

「お、お前。これはまさか憲兵団からかすめてきたのか?」

憲兵団とは、コロシアムで戦う剣闘士(つまり奴隷とその子供)たちを管理し、反乱を起こしたりするのを防ぐ組織のようなものである。他には、外の世界の悪人も取り締まっているらしい。そんな奴らから、食べ物をかすめてくるのは大変危険な行為なのだが、、、

「ふん、さぼって寝てるからだよ。」

憲兵団はもちろん、全員が全員真面目なわけじゃない。

「すごい危ないからやめといたほうがいいぞ。」

「じゃあ、これはいらないか?」

「それはいる。」



「もうそろそろ、俺たちも18歳だな。」

「ああ、待ち遠しいようなつらいような。」

18歳。それは、コロッセオで戦うようになる年だ。コロッセオで勝ったらましな食べ物を食べることができる。今の食べ物とはくらべものにならないくらい。負けたら、、、考えたくもない。俺たちの中には、楽しみにしてるやつがたくさんいる。

おれは、、、この小さな体で勝てるわけがないが、ここにいても未来はないことは理解している。別に、、、、

「そんな顔をするな。別に、レオは弱くないだろう。」

マーカスはいつもそう言って慰めてくれる。俺にもったいないほどいい奴だ。

「弱くはないかもしれないけど、強くはないな。3回も戦えば負けるだろう。」

マーカスが悲しい顔をしている。相変わらず、感情が分かりやすい男だ。

「はは、大丈夫だよ。」

もう、こんなことは小さいころからずっと考えているのだから。


「見学?」

俺は前々から考えていたことをマーカスに話した。

「そう、見学だよ。一般的な戦い方を知っているだけで戦いにおいて大きなアドバンテージになるだろ?」

戦いに慣れておくに越したことはない。

「でも、どうやってみるんだ?」

当然の疑問だ。

「地下から見れるスポットを見つけたんだよ。」


「お、始まったな。」

「ああ。」

ここから、会場の熱気が聞こえてくる。コロシアムは満員のようだった。

「東側~蟻のように小さな体から巨人のようなキックを繰り出すミネルバ!!!!!」

「西側~今まで彼のように強い人物がいたのだろうか?無敗の45連勝チャンピオンムーミン!」

二人の名が呼ばれるたびに、観客から大歓声が上がった。

「ミネルバ、、、」

「知り合いなの?」

「いや一回だけ因縁をかけられて喧嘩を売られたことある。」

マーカスに喧嘩を売るなんて中々度胸があるやつだ。

「ファイ!」

二人がゆっくりと近づいてく。

「はっ!」

鋭い!ミネルバのけりは確かに早くて鋭かった。そして、それを何でもないようによけるムーミン。

「なんの、今のはほんのジャブだ。」

砂ぼこりで、視界が砂で遮られる中ミネルバはどんどんと蹴りを繰り出していく。

そのすべてをチャンピオンは軽いしぐさでかわしている。流石チャンピオンといったところか。

「しかし、ここまで避けてばかりだとチャンピオンらしくないな。ほれ!」

「あ!!!!」

ミネルバの容赦ない蹴りがチャンピオンを襲った。

流石に、あの蹴りを受けて無傷ではいられないはずなのだが、、、

「チャンピオンムーミンは、これを受けても無傷です!」

実況の声が観客をあおりだす。

ミネルバの顔は青ざめてきた。

「ほら、足が震えてるぞ!」

チャンピオンのパンチが容赦なく、ミネルバを襲った。一発で倒れこむミネルバ。

「終わりだな。」

マーカスはそれを見て呟く。

「チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!!!」

「これが、コロシアムか。思ったより観客がうるさいな。それとチャンピオンには勝てる気がしない。」

だからこそあのチャンピオンはあの王座にいるのだろう。

「それに関しては完全に同意だ。すぐに降参していいかもしれないな。」

そして、観客が妙な熱気を発していることに気づいた。前よりもさらに大きな熱気である。

「チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!チャンピオン!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!こ・ろ・せ!!!」

親指を真下に向けている。

「お、おい。まさか、、、、」

チャンピオンが左手でミネルバをつまみ上げる。そして、右手を握りしめゆっくりと、、、


僕たちがそこから動けたのは日が暮れ始めてからだった。


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面白かったら、今後も読んでいただけると嬉しいです。

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