――――――参――――――
蘆屋家の裏には、小高いなだらかな山があり、神社や寺が多く集まっている。
その一つ、蘆屋家の敷地にほぼ隣接する神社を、「
途中に、八塚神社の第一の鳥居がある。鳥居をくぐると石段の
まだ
石段を登り切る少し手前の
ベンチに深く腰掛けた、その時。
「圭ちゃん、また逃げてきたのかい?」
振り向くと、
彼の名前は、
この神社の神主であり、
「
「……なんだ、
「なんだとはなんだ~。圭ちゃんがこ―んな小さい頃からの仲じゃないか」
泉穂は自分の膝あたりで頭を撫でる動作をする。
「あのさぁ、いい加減 ”圭ちゃん” って呼ぶのやめてくんない?もう高校生だぜ」
「圭ちゃんは何歳になっても圭ちゃんでしょ」
圭一郎は自分の周りに話の通じない人間が多すぎることを呪った。
「何だよ、人の顔見てにやにやと。気持ち悪い」
「ははは。圭ちゃんて本当は、まじめだしいい子だよねぇ」
「……お前、さっき俺が観月としゃべってたの見てただろ」
八塚神社の社殿は、この「隠れ家」よりもさらに高い場所に位置し、蘆屋家の庭が見下ろせる。
「掃除してたら、たまたまね。さすがに声は聞こえなかったけど、圭ちゃんが何してたのかはなんとなく、ね」
ね、のところで泉穂に笑顔で顔をのぞき込まれた圭一郎は、ため息をついてそっぽを向く。
「……まじめではねぇだろ」
見られたくない所を見られた気まずさから、どうでもいい事に突っ込んでしまう。
「まじめでしょ。なんだかんだでいつも学校のテストは受けるし、授業サボってても成績いいじゃん」
「順位がつくもので誰かの下になんのが嫌なだけだ」
授業をサボっているにもかかわらず成績がいいのは、ひとえに彼の負けず嫌いの性格が成せる技である。
「負けず嫌いは相変わらずだね。昔は「お父さんを越える陰陽師になる!」って、
「………」
自分の幼少期を知っている相手というのはどうもやりにくい。
「圭ちゃんは本当に陰陽師にはならないの?」
泉穂は、圭一郎の隣に腰を下ろしながら尋ねた。
「ならない」
「
「……帰る」
圭一郎は立ち上がり、ぶっきらぼうにそう言うと、小道を下っていった。
「……
去って行く圭一郎の背に、泉穂はボソリと
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