後編 俺はわるいこ
目が覚める。先生に貰った痛み止めの副作用で寝てしまっていたみたいだ。目を開けたはずなのに視界は真っ暗だ。何かめのあたりが覆われている気がする。とりああえず起き上がろうとする。しかし、起き上がれない。なんでだ…。
「あ、起きたの?」
誰かが来た。声だけを聞くと先生に似ている。とりあえず、現状がよくわからないので動けるように頼もう。
「あ、先生ですか? 多分ついてると思うんですけど目隠しを外してもらえませんか? 見えないし、あと身体も動けないんです」
「そうだね」
「そうだね…ってどういうことなんですか?
もう痛んでもないですから大丈夫ですよ?」
「だめだよ」
どういうことだ。全く理解ができない。まさか、目の前にいるのは先生ではないのか? だとしたら誰だ。まさか、またいじめてた奴らか…。
「あなたは先生なんですか」
「そうだよ」
先生?! なんでこんなことをしているのか。
「先生ならこの拘束を解いてくださいよ。痛みは引いているので大丈夫ですから」
「だから大丈夫じゃないって言ってるでしょ?」
「なにが大丈夫じゃないんですか」
「ふふ、大丈夫。君のことは私がしっかり守ってあげるからね」
近くにまだあいつらがいるってことなのか? でも、目隠しなどの拘束をする必要はないだろう。
「先生、なにをしたいんですか?」
「なにって、何度も言わせないでくれないかな? 君を守る。それだけだよ」
「守るって何をですか! さっきから先生おかしいです!」
「おかしくなんかないよ。君を守る。ずっとね。それだけだよ。そのためなら何でもする」
この人がなにを言っているのか俺には全くわからない。
「君をそばに置いて守ってあげるの。そのためにはまず君を私以外の誰とも関わらないようにしなくちゃいけないからね。私、変なこと言ってる?」
「変ですよ! そばに置くってのもよくわからないし、そのために隔離されるのもおかしいですよ!」
「私に逆らうの? 先生に逆らう悪い子にはお仕置きが必要だよね?」
先生は俺に向かってビンタをする。
「ダメだよ、私に逆らっちゃ。君とはこれからずーっと一緒なんだから私の言うとおりにしないと。まあでもこれから私の色に染まっていけばいいから。私無しでは生きていけないようになればいいだけだからね。それまで一緒に頑張ろうね」
これからずっと一緒? どこにも行けないのか…。それだけはいやだ。僕はどうにか拘束具を外すため動ける限りで暴れる。
「必死に暴れちゃって。そんなに私と一緒に入れるのがうれしかったのかな?? 私はすごくうれしいよ。一緒に頑張ろうね」
それから、俺にとっての地獄の日々が始まった。何かをするたびに先生のことを好きと言わされ、逆らうとたたかれる。よっぽどいじめられていた時の方がましだった。目隠しも拘束もそのままなので着替えもできない、食事は食べさえて貰うという生活が続いた。
「君もなかなか頑張るね。でも、いつも出す苦しそうな声。私は大好きだよ」
「あ、ありがとうございますね。まだまだいけますから」
「もう強がっちゃって。本当にかわいい。でも、実際そろそろ限界でしょう? そろそろ、最終段階に入ろうかなって」
最終段階…? たしかにこの生活はきついが食事もあるしなんとかはなっていた。とどめと言うことか。
「君って急にいじめられ出したでしょ。あれって私が仕組んだの」
「?!」
「まさかって顔してるね。もう本当に君は反応がかわいいんだから。そう、君を私のものにしたくてどうしたらいいかなって考えたら依存させるしかないなってね。本当はもっとじっくりゆっくり手なずけて自分から必要とするようにしていこうと思っていたんだけどね。君と保健室で二人っきりになったら気持ちが抑えられなくてね。こんな、私じゃ。ダメかな?」
先生がいじめを仕込んだ?! この真実が俺には受け入れられなかった。こんなことをしつつもいつも守るといっていた先生が。
「返事がないなぁ。ダメじゃないよね?」
俺は頭を鷲づかみにされながら頭を上下に振られる。
「よかったよお。先生はうれしいな。あ、どうやってあいつらに指示を出したのかって? 簡単だよ。知り合いの女使って弱み握っただけ。高校生の男子なんて簡単で助かるね。ちょっと脅しただけでこんなにいい働きするなんてね」
「…。」
「だからみんな私たちのために協力してくれているの。あとは君だけだよ? 君が私のものになってくれればそれでいいの。ちゃんとかわいがってあげるからさ」
俺は考えることをやめた。もういい、なんだっていい。先生は俺のことをかわいがってくれるんだ。そうだ、俺は先生のものなんだ。先生だけのものなんだ。おれはわるいこなんだ。
君の大切なひと 山川ぼっか @ke0122
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