第29話:彼の心

(カターシャside)


 サリーの過去は想像を絶するものだった。


 ラズリの娘というだけあって、遺伝的な魔法の威力が強い。早くにラズリを亡くし、自分の力と隣り合わせで過ごしていたんだろう。

自分で過去を消すなんて、相当辛かったんだな。


 自身の中から溢れるサリーへの気持ちはもう止めることができなかった。


「今日は俺、よく耐えたな」


 実は、隣で眠っていたサリーを眺めていたら、彼女の寝顔が可愛らしく、寝息が色っぽく、襲ってしまいそうで部屋を出てきた。最後のキスは襲わなかった自分へのご褒美だ。



「サリーには見えなかっただろうが、後ろでアズールが俺のこと睨んでいたんだよな……食われるかと思った……」



ーーーーーー


 自分の気持ちを認めたカターシャ。

 廊下を歩きながらいろいろなことを考えていた。



ーーーーーー


 怖くても影に勇敢に立ち向かうサリー。周りの仲間に打ち解けようと奮発している姿はなんとも愛くるしい。

 

 彼女は自分の過去に向き合い少しずつ成長している。


そんな姿を側で見れることが一番嬉しいんだ。



「俺はサリーのことが好き……」



 声に出したら少しだけ心が軽くなった気がした。


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魔法使いを自覚したら〜砂漠の出会いは砂嵐〜 夏野うさぎ @natsunousagi

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