第27話:守りたい者
サリーを部屋まで運ぶカターシャ。さっきまでの呆れた態度とは違い、自然と頬が綻んでいた。
サリーとアズールが使用している部屋はそこまで広くはない。トラが大きいから少し狭いんだろうなーと独り言を言いながらベッドにサリーを寝かした。
「今日もお前に助けられてしまったな……」
サリーに布団を被せながら呟く。
寝顔を見るのは久しぶりなんだろう。ベッドの近くの椅子に座りサリーを眺める。時折苦しそうな表情をする彼女に心が揺らいだ。
「こいつ、大丈夫か??」
熱があるんじゃないかと思い額に手を当てるカターシャ。するとサリーから想いもよらない一言が。
「お母さん……待って……」
夢でうなされているんだと理解したカターシャ。
「サリー?? 起きろ」
「待って……置いていかないで」
「おい、起きろ……」
「嫌っ……まって……おいて……か……
ーーーー。
あれ……カターシャ……」
必死に起こすカターシャの声でサリーは勢いよく布団から起き上がった。
少し冷や汗をかいてるみたいだ。
「大丈夫か??」
「私……夢で……お母さんに会って……」
急にボロボロ泣き出すサリーをカターシャが抱きしめる。
「よし、大丈夫。大丈夫だ。サリーは一人じゃない」
「うっごめんね。今だけ……だから……」
サリーはそういうとカターシャの背中に手を回し、糸が切れたかのようにわんわん泣き出した。
サリーを抱きしめてからどのくらいが経ったのだろう。
「おい?? 大丈夫か??」
カターシャの声に全く反応しないサリー。心配になって顔を見ると寝息を立てて眠っていた。
「ったく振り回しやがって……」
そんな彼女を優しく倒し、布団に寝かす。なんとなく、カターシャも隣に寝転がった。規則正しく聞こえるサリーの寝息。彼女は短い金髪にピアスがよく似合う。きっと母親に似ているんだろうな……そう思いながら、時々流れる彼女の涙を拭う。
「大丈夫だ。俺がそばにいるから……」
カターシャの声が分かったのか、無意識に、ぎゅっと彼の服を握るサリー。
大丈夫、大丈夫というようにサリーの背中に手を回す。時折見せる苦しそうな表情に心がぎゅっと締め付けられるカターシャ。気付いたら彼も眠ってしまっていた。
「スイカ美味しかったな〜」
ルンルン気分でサリーの部屋に戻るアズール。
ドアを開けると、二人が仲良くベッドで寝ていた。
「ふふふっ。二人はどうなったのかな」
くっついて眠るサリーとカターシャを眺めながらアズールは考えをめぐらせた。
「よし、僕もここで寝よう」
そういうと、二人が眠るベッドに登るアズール。サリーの後ろ、カターシャとアズールでサリーを挟むようにして横になった。
どう見ても狭そうなベッドにぎゅうぎゅう詰めだ。
「サリー……おやすみ」
アズールが隣でささやいた。
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