第24話:光の蜘蛛との出会い

「じゃあ、魔法を唱えるね。カターシャ少し離れて」



「ーーーーーーああ」



サリーは魔法陣の中心に立ち、魔法を唱えた。



「ーーーーーー」



 すると店内が金色の光に包まれた。



「わっ!!!! 眩しい」

 


 光で周りが全く見えない。サリーはドキドキしながら時が来るのを待った。


 

『あら、サリーさん。お久しぶりですわね。今日はアズールはいないのかしら』



 綺麗な声が聞こえると同時に光が収まった。明らかに空気の流れが変わっている。サリーの目の前には二メートル程の金色の蜘蛛が召喚された。

 

 驚き猛ダッシュでカターシャの後ろに隠れるサリー。



「遠くからすみません。初めましてサリーと申します」



 カターシャの後ろからひょっこり顔を出して自己紹介をするサリー。カターシャの上着の袖を握っている。



「サリーお前どうした??」


「じっ実はですね……一つ問題がありまして」


「なんだ??」


「私、蜘蛛が大の苦手なんです!!」



 カターシャは大爆笑だ。ついでに言えば召喚した蜘蛛も上品な笑みを浮かべている。



『サリー、あなた蜘蛛が嫌いなのに召喚したのかしら?? 度胸があるわね』



「だって影も成仏させてあげたいし、画陣の国の人も助けたいですし」


 サリーは半べそで答えている。



『時間がないんでしたね。急いでやりましょう』


 光の蜘蛛がサリーの方へと近づいた。サリーの蜘蛛に対する苦手意識が低くなったと感じたからであろう。 



「まずは影を探さないといけないよね??」



「いや、後数分もすればこの辺りに来ると思うぞ」



「なんでわかるの??」



 カターシャが先を読めるようなことをいうもんだから、この人には予知能力も備わっているのかと思った。



「さっきちょいと仕掛けをするようにノアールとリコリスに頼んでおいたからな」


『ふふふ。さすがサリーの王子様ですわね』


「なっ!!!!」


 ついには光の蜘蛛にも弄られ出したサリー。焦ってぎゅっと握っていたカターシャの上着の袖を離した。


「よし、外に出るぞ」


 光の蜘蛛の跡をついていく感じで扉へ向かった。

 するといきなり立ち止まる蜘蛛。振り向きサリーにこう告げた。


『サリー?? あなたは立派な魔法使いよ。もっと自信を持ちなさい』



 サリーは強く頷き外へ出る。



 サリーに握られていた袖をまじまじと見るカターシャ。一人で優しく笑ったのは、彼女に対してきっと新しい感情が芽生えたからであろう。


「俺は王になる男だ!!!!」


 店の外で男が叫びまくっている。正しくはだろう。


 見ると店の外は激しく荒らされてぐちゃぐちゃになっている。リコリスとノアールは影が出す灰色の煙に追われている。周りではノアールの部下たちが金の魔法とやらを使って影の動きを抑えようとしている……だが、影の威力が強すぎて手こずっているようだ。影の放つオーラは相変わらず真っ黒……


「嬢ちゃん!! そろそろ限界だぞ!!」




 意を決して金の蜘蛛が前に出た。


『あなた、そろそろ光になったらどうなのかしら』



 大きな声でそう叫ぶ光の蜘蛛が影に近づいていく。



「近ずくな!! なぜお前らは操れない!! 俺は、ただ、みんなが幸せで、何不自由なく生きれる国を作りたいだけだったんだ!!」



 リコリスとノアールを追う煙が止まった。


「久しぶりに走りましたねぇ〜」


 息を整えるノアール。




「お前らは一体誰の味方だ!! 王か!! 裏切り者の王様か!!」



 影は怒り狂っている。



「…………」



 サリーは影の負のオーラに飲まれてしまいそうだった。それに気付いたのか、カターシャはサリーを自分の隣へ引っ張り寄せた。



「王位争いではよくあることだ」


 隣でささやく。


「家族は全員、兄さんの味方だったんだ!! 戦地で死んだのも全部あいつのせいだ……許さない。俺は一生許さない……」



 影が怒り狂い、灰色の煙に紫の煙のようなものが混じってきた。煙の向かう先は光の蜘蛛の方へ……



「意志を失ってきている……住民の移動を急いでください!!」



 ノアールが隊員たちに叫んでいる。町の人の中には悲鳴をあげて逃げる人もいた。




 と、次の瞬間。影が出す煙が、針のようなものへと変わった。



「なんですかあれは……」


 ノアールも見たことがない、という表情をしている。



 すると強風が吹き始め、空は瞬く間に分厚に雲に覆われた。嫌な予感は的中。煙が針へと代わり、空から降ってきたのだ。針にめった刺しにされると誰もが思ったことだろう。



「みんな危ない!!」



「ーーーーーー!!!!」


 いきなり金色の光が町の人たちを包む。


「なんだこれは??」


 カターシャがサリーの方を見ると、持ってきたのであろう、光の蜘蛛を召喚したときのペンを振りあげていた。


「お嬢さん、やはり魔法使いだったのですね!!」


 ノアールが大きな声で叫ぶ。


「なんか、力が発動したみたい。私もよくわからないんだけど」


 サリーの持つペンの先からはキラキラしたものが出ていた。影が放った針は包まれた光によって跳ね返されている。


『サリー、そのまま力を維持して……私が影を光に変える術を唱える間、町の人たちを守るのよ』


光りの蜘蛛がサリーに話しかける。


『行くわね……』


「はい」

 

 光の蜘蛛は何本もある自分の足を地面に深く潜らせた。そして、土の中を通り影の動きを封じようとしている。


サリーの後ろではカターシャやノアールが町の人を避難させていた。



「お前らよくも……俺の計画を邪魔しやがって……」



 影とサリーの目があった。


 すると彼女の中で何かがプチンと切れた。



「ねぇ!! あなた家族を恨むのもいい加減にしなさい!!」



 そう叫ぶと影の方へと走るサリー。



「ちょっとサリーやめろ!! 行くな!! 危ない!!」



 カターシャはサリーを止めようと走り出している。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る